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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

日曜日の和尚さん 

2013/11/25
Mon. 09:23

久々の法事が入ったので改良衣に着替えて外に出てみると、石見銀山の狭い谷に広がる秋の青空を分けるように南から北へ向かって走る飛行機雲。
貴重な好天のもと、外仕事の誘惑に短く刈り込んだ坊主頭の後ろ髪を引かれる思いを断ち切って施主さん宅へ走ったのでありました。

万善寺から車で5分ほどのところにある施主家は、昭和の農地改良と町道の拡幅工事で移転対象となって、現在の場所に新築されました。
その後、墓地は元のままだったのが、先代の当主が踏ん張って立派な寄せ墓に変わりました。
先先代は土地の石工さんで、島根の山間部一帯に広がる石山の中から青御影の玉石を採石して墓石をつくる職人さんでもありました。
その師弟関係の縁もある石屋さんが踏ん張ったかいもあって、現在の墓石はとても上等な青御影が使われて、なかなか奥深い味わいを醸し出しています。

最近は、ほとんどの墓石が中国からの半製品輸入品になって、島根県の海辺を走る9号線の各所にある石屋さんは、どちらかというと墓石輸入業の方へ業種替えした感もあります。
地物の石も使われることが随分と減った上に、島根山間部の採石を兼ねた石屋さんは、軒並み事業縮小や廃業に追い込まれている状態です。

この度の施主家の近所には、とても勉強熱心な大工の棟梁が暮らしていて、周辺で万善寺がらみの法事があると、だいたいの施主さんはその大工さんに塔婆をつくってもらっています。
棟梁は、どちらかというと宮大工に近い方で、寺社改築や、本堂御堂の新築などで広島県の方まで出かけたりしていらっしゃいます。
若い職人さんも何人かいらっしゃるのですが、せいぜい1枚の板塔婆をつくるだけの仕事でも、仏事の一部に関わることは全て自分の手で材料を選んで道具をふるって汗を流されるほど信心深い方でもあります。
この度も、米ヒバの節無し1本柱を探し出して立派な角塔婆が出来上がっていました。

時代の流れに淘汰されても仕方の無いギリギリのところで踏ん張っていらっしゃる地元の職人さんの心意気が伝わる地物の青御影に節無しの角塔婆。
最近の法事ではなかなか見かけることの出来ない信心の様子を噛み締めつつおつとめをさせてもらったところです。

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2013-11