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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

勝負にならん 

2014/06/10
Tue. 10:12

このところの数日間、キーポンが自宅を早出することが増えてきた。
吹奏楽の早朝練習をしているのだと思う。
日曜日に西部地区の吹奏楽祭があったことと、次の吹奏楽コンクールに向けての練習強化の時期なのだろう。
たしか6月の一週目あたりは高校総体だったはずだ。
先日、久々の年回法事で出かけた先では、斎膳の席で少年野球の強い弱いで話題に花が咲いていた。
ブラジルのサッカーもメディアで賑わっている。
少し前にはオリンピックもあったし、このところ勝ち負けや一等賞を争うような勝負事の話題が増えたように思える。
そういうことはたぶんずいぶん昔からあったことで、特に最近になって急に増えているわけでもないはずなのに、結局世間の事情から逃避しているような自分のところまで流れてくる情報量が増えているから余計にそう思うのだろう。

どうも勝ち負けの勝負事が好きになれない。
まだ血の気の多い10代の時を思い出しても、回りの連中が大騒ぎするほど勝ち負けで歓喜することはなかった。
高校生で美術部だった時も、島根県の美術展に出品することはなくて、部員が入選や入賞を目指して大作に取り組む横で石膏デッサンなどしていた。
そういう具合だから受験勉強は自分の性格に合わないし、そもそも闘争心というものが希薄だから、「まぁやることやってればそのうちなんとかなるだろう」くらいにかなりクールに乗り切った。
就職試験も、別にこれといって特別なことをすることもなかった。
坊主の方もそんな感じでなりゆきで副住職になって、別に目標も望みも欲も無いまま延々と何十年も小さな山寺の寺務を続けた。

彫刻を造りはじめるようになってからも、当分の間そんな感じで公募展に出品を続けていた。
気持ちが変わったというか、割り切ったというか、そういう時がきたのは、彫刻の恩師の一人山本兼文さんが病気で亡くなったあとのことだった。
志半ばの無念の思いで亡くなった彼の意思を継ぐのは自分しかいないだろうと、身勝手に思い込んだことがきっかけになって、自分の気持ちが変わった・・・というより、無理に変えた。

それからあと、しばらくは脇目もふらないで突っ走った気がする。
偉そうにいうと、島根や鳥取に在住する地域の彫刻家の新鮮な芽を育てることが兼文さんの意思を引き継ぐことになると思っていた。
島根や鳥取でのグループ展や広島との交流や、東京の美術館へ彫刻を搬入搬出したり、色々活発に行動しているあいだに、少しずつ若い作家が育ち、又は消え、色々厳しく淘汰されつつ実力を身に付けて、みんなそれなりに良い年齢になった。
4〜5年前に、腰も痛くなるし、体力も続かなくなるし、何時までも若い時と同じようなわけにもいかないからもうそろそろいいかな・・と肩の力を抜いた。

彫刻の世界も生臭い勝ち負けの常識が揺るぎなく構成されていて、そういうところでしのぎを削っている彫刻家がいっぱいいる。
実力に結果がついてくることは本物だと思うが、なかなかそこまでシンプルでもない。
自分の知らないところでいろいろな思惑や戦略が飛び交っているような気がする。

2010年からスタートした現代彫刻小品展も5年目を迎える。
世間のしがらみに縛られないで気持ちよく楽しく彫刻を造ったり発表したり出来るような展覧会になると良いなぁと思って始めた。
だいたい5年くらいすると、そろそろ作家が固定しはじめるし彫刻展の色合いも見えはじめる。
考え方を変えれば過渡期にさしかかっているように思える。
しつこいようだが、自分には勝ち負けの勝負事に興味がない。

この展覧会は助成金がないと成り立たないほどの脆弱なものだから、その助成結果の報告会があった。
「彫刻の何処が良いのか素人には難しくてわかりませんなぁ」
「このような展覧会を続けることが石見銀山とどのようにかんけいするんですか」
などと質問を受けた。
たった1年でそんなことを期待されても困っちゃうよね。
吉田なんか、もう30年以上も彫刻を造り続けてまだ悶々としてるんだから・・
二つ三つの彫刻を見て「どうも理解出来ん」て言われても、「ごもっともです」と言うしかないでしょう。

偉そうに言うわけではないが、今の日本に芸術文化の歴史は育っていないなぁと思う。
ものを、結果で判断するしか出来ない見識の無さがバレるような発言というか意見というか・・・良い歳した大人でその程度のことだからやるせない。
勝負というのはどうも結果を優先するように見える。
「まずは島根県で一番になろう!」なんていって、いくら練習を続けても、才能や能力はそんなにアレヨアレヨと伸びているわけでも無いと思う。
彫刻だって一緒ですよ。
コツコツと継続することに意味があるし、それが実力になっていく。
運を掴むのも実力のうち・・程度で気楽にいたほうが良い結果に繋がるような気がするし、吉田の場合はそうやって周囲の皆さんに助けられてこの歳まで生きてこれていると思っている。

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