工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

野生の境界 

2017/06/03
Sat. 23:52

石見銀山から飯南高原から雲南、出雲と、そのあたりをウロウロする毎日が続いていたが、ほぼ1ヶ月ぶりに江津方面の仕事があって、波の穏やかな快晴の日本海へ出た。
私は、生まれも育ちも山の人間だから、海を見る機会が極端に少なかった。
今、家族と暮らしている石見銀山からは、結界くんで10分も走れば日本海を見ることが出来るし、彫刻の素材探しに重宝している石の海岸も近い。
彫刻の仕事でつまづいたり、気持ちが晴れないことが続いたりした時は、なんとなく日本海を見たくなる。
今日のように快晴で穏やかでもいいし、悪天候で波が高くてもいいし、日本海に沈む夕日が特に見えなくてもいいし、とにかく、海と馴染みが少ないまま大人になった私としては、日本海になにかしらどこかしら気持ちのザワメクものがあって、無性にそういう刺激を求めたくなることが時々やってくる。

前日の夜が夜更かしだったから、結界くんを運転している間中眠くてしょうがなかった。
国道から旧国道へ左折して西へ走っていたら、突然「ドン!」と大きな衝撃があって結界くんがグラッと揺れた。
ボォ〜っとしてハンドルを握っていたから、突然のことで一瞬何が起こったのか頭がまっ白になった。
バックミラーに、なにやら黒い物体が横切った。
「ギャワッ!グブグブ!グフャ!」
何とも言えない叫び声を上げながら旧国道脇の林へ逃げ込むところが目に入った。
あの野太い鳴き声は、クマに違いない。
ゴロッとズングリした体型も猪とは違う。

もう、10年は前のことになるが、盆の棚経で神門川の支流脇の街道を走っていたら、川向うの桜並木の道を、競歩くらいの速さでツキノワグマが私と同じ方向へ向けて移動していた。あのクマは黒ぐろして立派なオトナだった。
今回の動物は、黒というより黒に近いグレーに見えた。これは光の反射の具合だったかもしれない。10年前のツキノワグマの半分くらいと小さかったが、あの何とも無骨な競歩の感じは近い。
結界くんの衝撃があまりにもすごかったから、横腹の何処かが凹んでいるかもしれないと心配になった。駐車場へ到着してすぐに確認したがこれといった凹みは見当たらない。
しかし、どうしてワザワザ走行中の結界くん目指して飛び込んできたのだろう?
「このあたりで、クマの目撃情報はありますか?」
「今年は、そういう話は聞きませんが・・・去年だったかなぁ・・ローソンの近くにいたという連絡が入ったことはありましたね」
「あれは、多分、クマだったと思うのですが・・・小さかったから子供かもしれません」

暑いから、窓を開けて走っていると、モヤァ〜っと、獣の匂いが流れ込んでくることがある。だいたいそういう時は猿の集団が周囲をうろついている。
島根県は少しずつ人間と野生の境界が近づいている。

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2017-06