FC2ブログ

工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

密葬の日 

2017/07/06
Thu. 23:30

「方丈さんの車があると、(あぁ〜、いらっしゃるなぁ〜)と、すぐわかって・・」
「寺におられると、だいたいいつもこの椅子に座っとられて・・」
「朝も早うございまして、(早すぎるかな)と思っても、もう、起きとられて・・」
「大きな熊手で庭掃除しとられたりなぁ〜・・」
荼毘からの帰りまでお寺で留守番のお檀家さん方の思い出話し・・・
(皆さんに慕われた立派な方丈さんだったんだなぁ・・)と、生前の様子が垣間見れた。
さすが在位62年の現役方丈さまだ。とても自分には出来ないことだと思う。
本葬用だと思うが、その印刷物への略歴原稿がテーブルに置いてあって、何気なくチラリと見させてもらったが、まことに華々しい職歴がビッシリと記されてあった。
隣の寺の方丈さまのことであるのに、あまりに知らないことが多すぎる。

密葬の朝は、前日までの大雨があがって、蒸し暑い曇り空となった。ジッとしていても白衣に汗が沁み込むのが分かる。
葬儀の配役で主喪を当てられたので、少し早めに万善寺を出発した。
遺弟さんとはそれほど親しい関係でもないから間合いの具合が微妙で気持ちを読み取りにくいところもあるが、出来る限り付かず離れず、邪魔をしないように本葬が終わるまで様子を見ていこうと思う。

密葬から出棺が終わって火葬場までお付き合いしたところで、安位の祭壇の人手が不足している事がわかって、急きょ浄土寺へ引き返すことになった。
最近、まともに落ち着いて一杯のコーヒーを飲むことも無かったから、ファミリーマートへ寄り道をしてコーヒーを買った。いつものことだが、改良衣に雪駄履きで店の中をうろついているとお客の視線をヒシヒシ感じる。そういうスタイルは坊主の制服のようなものだから自分ではどうとも思わないが、やはり一般には珍しいことなのだろう。こういう時に、大衆の信仰が神仏から遠く離れてしまったことを強く感じる。

万善寺の憲正さんが二十二世で60年在位。浄土寺さんが同じ二十二世で62年在位。
修行僧の頃からだと、生涯僧侶を貫いた二人の大和尚さまは、大きな時代の変遷の中でそれなりに布教の苦労もあっただろうが、それでもソコソコ充実した住職方丈の人生を送ることが出来たのではないだろうかと、私はそう思う。
50にも充たない檀家で坊主暮らしのやりくりを考えなければならない現住職は、一方で百も二百も桁違いの大きなお寺様と同じように寺院付き合いを迫られることになって、この不条理はとても日常の修行と信心だけでは埋めることが出来ない。
ある意味、そういう現実と向き合ってノラリクラリ適度に緩くその時々を乗り切っている自分もナカナカのモノじゃないかと思ったりする。

「このスズメも、もう餌がもらえんようになりましたなぁ〜」
いつもの場所のいつもの椅子に浄土寺さんが座ると、スズメたちが窓下へ集まるのだそうだ。毎朝、パンをちぎって彼らへ食べさせてあげていたらしい。ヌシのいなくなって誰も座ることない空席のままの椅子のすぐ下へヒトを恐れないスズメたちが集まっていた。

IMG_4914_20170707093114d1b.jpg
IMG_4963.jpg

[edit]

CM: 0
TB: 0

page top

2017-07