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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

何時もの海岸 

2017/07/22
Sat. 23:27

仕事の合間に日本海へ出た。
工場は強烈な暑さで、粉塵の換気代わりに回している古い扇風機が何の役にも立たないまま、熱い空気をかき混ぜているだけだ。
ツナギは汗を吸って重たいし、鉄板入りの安全長靴の足が気持ち悪いほどジクジクしている。
こういう劣悪な環境ではなかなか集中力も続かないし、チョットした気の緩みで大怪我をしてしまったりする。
自分一人で工場へいる時に、一番注意しなければいけないのは怪我だ。
大怪我をしても誰も助けてくれないし、すべて一人で世話しなければいけない。
常々、仕事の進捗より自分の身体を気遣うことを優先するようにしている。
今日も、集中の限界を感じて、あと少しでキリの良いところまで進む仕事を切り上げた。
身体の方は悲鳴を上げているのに、気持ちだけが熱く盛り上がっているという状態が一番危険だ。

コンビニでスポーツドリンクとお茶のペットボトルを買って、何時もの海岸へ結界君を走らせた。
狭い駐車場へ乗用車が1台止まっていた。
日本海へ直角に止めて海岸を見渡すと・・・砂浜になっている・・・

私が彫刻の素材で使う日本海の石は、だいたいその海岸で採集する。
島根県の海岸はほとんど砂浜と岩場ばかりで、石浜を探すことが難しい。
たいしてこだわっているわけでもないが、川の玉石は、角の取れ具合というか丸まり具合にまだ完成されていないところがあるように感じる。こういう石は自分の主張というか個性というか、そういうものが宿っていて全体がひとつにまとまりにくいところがある。
日本海の石浜の方は、徹底的に海の波で転がされて、稜線が微かにかろうじて残りつつ、一方で個性が程よく消えるまで丸まってくれている。
この、川の石と海の石の違いで自分の彫刻の主張の落とし所が狂ってしまう。

毎年少しずつ採取して補充しながら使い続けていた石浜の石が、見事に跡形もなく消えている。こういうことが数年前にもあった。
仕方がないからホームセンターで20kg入りの玉石を買う羽目になった。巨大なポットミルで挽いて作成した玉石は、見るからに味気ない。少しほどストックしてあった海の石を全てかき集めて、その玉石もどきと組み合わせてなんとか展覧会を乗り切った。
あの時の記憶が蘇って、防波堤に立ち尽くしてしまった。

砂浜になってしまっている海岸で、500ml2本分の水分補給をして工場へ帰ってプラズマ切断を準備したが、どうも仕事が手に付かない。
飯南高原の山暮らしが長く続きすぎたツケが回ってきた気がする。
この前この浜に来たのは、俊江さんが死んですぐの頃だったはずだ。
あの頃は、冬の名残の冷たい北風に白波が立って、海岸の石が波打ち際で濡れていた。

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2017-07