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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

雨の美術館 

2017/07/25
Tue. 23:47

猛烈な豪雨の山陰道を結界くんはフラフラしながら健気に走り続けて、ほぼ予定の時間通りに松江へ着いた。まだ午前中だと云うのに、空は厚い雲に覆われてどんよりと暗い。国道は渋滞していていつもと様子が違う。対向車はほとんどがライトを付けて走っていた。

山陰二記の展覧会があって、その搬入で松江の美術館までワイフとワイフの彫刻を乗せて移動した。ワイフはそのまま松江から東京へ移動する。7月の押し迫った最後の日曜日になっちゃんの結婚式があるので、先発隊を務めることになった。
島根と東京の距離で、電話やLINEやSNSなどを駆使して色々連絡をとりあいながら準備を進めていたが、関係者のみんながそれぞれ自分の仕事をしながらその合間に思いついたり思い出したりする断片的なスケジュールや用件を伝えあうくらいのことしか出来ていないから、具体的な全体像が実に曖昧なまま当日を迎えることになるだろう。
いずれにしても、終わりよければ全て良し!・・・といったあたりに物事が収束してくれれば良いことなので、今は、時々の流れに我が身を委ねている状態だ。

展覧会へ向けて杉の丸太から掘り出していたユキちゃん(彫刻見習い)の半抽象の彫刻が、搬入当日の朝になってやっと最後の仕上げに入った。
ユキちゃんは同じ猛烈な豪雨の中を搬入時間から少し遅れて美術館へやってきた。飯南高原の方もかなり強烈に降ったようで、移動の道中が大変だったようだ。
いずれにしても、無事に彫刻の搬入も出来たし、ひとまず安心。
私としては、まだまだ完成度のレベルアップが可能な気もしていて、制作過程の造形の組み立てに工夫の余地が残されていると思うが、本人は、かなりしつこく時間をかけてかたちに寄り添っているようにも見えたし、まぁ、彫刻の大小は抜きにしてユキちゃんの粘り強さと集中力と持続力と執着心と直向きさが十二分に内包された立派な木彫に仕上がったと感じる。
なんでもかんでも、大きければ良いというものでもないし、作家の許容の範囲で表現の段階を確実に抑えながら次に繋げることが制作の継続にもなるし、作家歴の積み重ねには、そのことがとても大事なことでもある。
ひらめきや思いつきやセンスにすがったり頼ったりして出来上がる作品は、結局鑑賞の持続につながらないし、一瞬の感動に頼りすぎる危険性もある。
見れば見るほど味わいが伝わってくるような造形の奥深いところを目指して欲しい。

美術館の会場に山陰彫刻界の重鎮古市義二さんの顔を見た。倉吉在住で、昨年の鳥取県中部地震では制作工房が倒壊する被害を受けたそうだ。それでも、めげずに工房の復興を目指し、瓦礫の中からめぼしい材料を引き出して彫刻に置き換えるエネルギーには頭が下がる。90歳を越えてなお、益々やる気満々のご尊顔に接し、気持ちが高揚した。
江津市出身の絵画の重鎮佐々木信平さんは、残念なことに先頃他界された。静岡の制作アトリエで最後まで制作に没頭されていたようだ。
すぐ近くで、こういう立派な造形作家の後ろ姿を見ながら、自分の彫刻の励みにしていられることはとてもありがたいことだし、幸せ者だ。
古市氏の益々のご多幸と、佐々木氏のご冥福を祈りつつ美術館をあとにした。

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2017-07