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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

畜生道 

2017/09/02
Sat. 23:37

午前中に江津で用事を済ませ、工場へ直行してワイフの彫刻パーツや道具など必要なモノを結界くんへ積み込んで万善寺へ向かった。
夕方には隣町まで4・7日の七日参りでお経と墓参に出かけ、ついでにスーパーで半額のお惣菜を買って、先頃遷化されて寂しくなった寺へ回って、帰らぬヌシを待っている柴犬のようすをみた。
夏の間は厳しい猛暑のためか、それともヌシがいなくなったせいか、瞳も虚ろで地面に張り付くように寝転がったまま尻尾も振らないでぐったりしていたが、秋風が吹いて涼しくなり始めたら急に元気を取り戻して、私の姿を見るとちぎれるように尻尾を振りながらリードの長さいっぱいまで走り寄ってきた。
もうあと10日くらいしたら寺の留守居を切り上げてしまうらしい娘さん(といっても、もうおばさんだけど・・)がいなくなったら、その柴犬は無住の寺に一匹残されてしまう。
「どなたか、面倒を見てくれる人見つかりましたか?」
「それが、まだ・・・・」
「あきらめないで、色々たずねてみてくださいね。ギリギリまで」
「そのつもりですが、ナカナカ見つからなくて・・・『可愛いぃ〜♡』とは言ってくださるのですが・・・ヒトが来てもぜんぜん鳴かないし、いい子なんですけど・・なかなか飼ってくれるまでにはいかなくて・・・」
どうも、歯切れの悪い返事がかえってきた。
ヒト(他人)の心など、だいたいそのようなものなのだろう。
「何歳ぐらいですか?」
「さぁ〜〜、よくわからないんですけど・・・」
それなりに老犬のようだし、最悪、保健所行きを覚悟するしかないことになると、まず引き取りもなくて殺処分になることだろう。
生前のご住職の話だと、血統書付きの柴犬だということだった。
そういう話題になると、目を細めてにやけた顔になっていたから、そっけない風を装いながら、内心はとても可愛がっていたのだと思う。
「引き取り手が見つからないようだったら、万善寺の番犬で引き受けることにしましょう。どうせ、あと1〜2年の命でしょうから、そのくらいならなんとかなるでしょう」
そう言い置いて、ご本尊の阿弥陀様に手を合わせて帰りかけたら、
「どうしてもの時は、預けさせてもらってもいいんですよね?」
私の背中に娘さんの念押しの声が乗ってきた。さて・・・これから数日間で飼い主が見つかるのだろうか?・・いや、飼い主を探す気があるのだろうか?
エサ代もかかるし、散歩も日課に加わるし、犬を飼うのもそれなりに腹をくくる必要があってのことだが、口のある生き物を粗末にすることは出来ない。
仏教六道で三悪道の一つといわれる「畜生道」は、本能のままに生き、自力で仏心を得ることの出来ない世界をいう。
犬はまさにその畜生道の世界に生まれて死んでいくことになるわけだが、一方で、悪意を持って嘘をついたり騙したりするようなことはしない正直者でもある。
腹黒い魑魅魍魎のうごめく「人間道」の世界よりすっとシンプルで潔い世界だとも思う。

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