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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

今時上法事事情 

2018/11/09
Fri. 23:30

寺の夜は結構寒かった。
今年は今までにないほど暖かい日が続いていて秋になってからは雨もそれほど降らない。
そのせいかどうかわからないが、自分の身体が暖かさに慣れて鈍り切ってしまっていたようだ。
石見銀山と飯南高原の標高差は200mくらいのものだろうから、それほど気温の差も無いだろうと思っていたが、少々考えが甘かったようだ。さすがに高原の夜は冷え込んだ。温かいとはいえ、やはり季節は確実に冬に向かっている。

上げ法事のお参りが9時になっている。
前夜にあらかた法事の準備はしておいたから、あとは本堂の朝の用事を済ませて施主さんの到着を待つばかり。
俗に「上げ法事」というのは、お寺の本堂で法事をすることを云う。ことの始まりは、昔々戦争とか災害で一つ集落が全滅するほど大量の死者が出た時、それぞれ個人でお葬式を出すことが出来なくてどうしようか困っているところへ「それじゃぁ、お寺さんの本堂を借りてみんなで合同葬にしましょう!」と思いついたのが始まりだと聞いた。
それが、最近では個人の葬儀や法事でもお寺を借りることが増えてきて、市街地ではむしろその方が当たり前の常識になっているようである。
細かいことを言えば、昔ながらの仕来りにはそれなりに納得できる意味があることなのだが、時代が変われば変わったなりにその時時の自分の都合が優先で物事が進むようになってしまった結果が今に至っているということなのだろう。
萬善寺のような田舎の山寺も、結局は施主家の都合が先に立って市街地の方から流入してきた「上げ法事システム」が増えてきた。
田舎から街場に転出した家族親族から「うちの方では、お寺さんへ行って法事してますよ」などと、ソレが普通のようにもっともらしい情報を聞かされてしまうと「そういう方法もあったか!」とか「そりゃぁ、自宅の世話が無くて楽になるわぁ〜」とか「お寺さんへ現地集合ということでよろしく!」とか、そういう簡易的法事形式が浸透し始めた。

ワイフの実家は菩提寺が新宿の方の比較的有名な浄土真宗大谷派のお寺だが、そこでは先代の御院家さんが亡くなって今の代になってから一度も自宅の仏壇前でお経をあげてもらったことが無いそうだ。それで、上げ法事が普通になって法事のお参りをすると、お布施の他に本堂使用量、茶菓子代、花代などの必要経費を別途請求された上、御院家さんの斎膳の膳料や会館の使用量まで請求されるのだそうだ。そういうことになると、何のための法事なのかわけのわからないことになってしまう。それで、最近では法事もやめてしまって御院家さんに見つからないように親族が境内の墓地へ集まって墓参りだけをして近くの料理屋で親族だけで斎膳をいただくことにしたそうだ。お経のない法事というのもどうかと思うし、萬善寺の場合ではあり得ないことだ。
そんな、今時の法事事情をサラリと受け流して、茶菓子と番茶を用意して位牌堂へ法事の準備を済ませて待っていたら、施主家のご夫婦が到着された。
せっかく本堂で法事だから、妙法蓮華経如来寿量品をゆっくりキッチリおつとめさせていただきました。

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