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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

冬の東京 

2020/02/04
Tue. 13:59

立春の朝は青空が高くて冷え込んだ。
見上げると、石見銀山の谷のはるか上空には箒でサッと掃いたような筋状の雲が東西に横切っていた。
銀くんの窓ガラスは一面霜が厚く張り付いて真っ白だ。
霜が溶けるまで暖機運転をしながらApple Musicをチェックした。

このところ、ゆっくりと音楽を聴く余裕も時間もないままだったからその間にニューリリースのアルバムが増えていた。
年末から年始にかけて新譜のリリースで賑わっていて、お陰様でお正月の寺の一人暮らしは夜な夜な大音量のエアチェックが続いて全然寂しくなかった。
ホールジーの久しぶりのアルバムは彼女の透き通るような声に惹かれる。もうかれこれ40年も前に買ったDIATONEの古いスピーカーから流れるアコースティックの柔らかな音を聴いていると自然に睡魔がやってきて右半身の痺れもしばし忘れていられる。
メーガン・トレイナーの4〜5年ぶりのアルバムは、ある意味で彼女らしくて、運転のバックミュージックで聞き流すにはいい感じだ。石見銀山の自宅前の駐車場で再生を始めると、だいたいアルバム1枚聴き終わる頃に寺の境内へ到着する。丁度いいタイムキーパーになっていて、今のところ通勤坊主が飽きないでいられる。

怜子さんの急逝で高速バスの移動中には、寝付くまでトルド・グスタフセンの賛美礼拝を繰り返し聴いていた。
具体的な情報がなくて状況がよくわからないまま移動していることのなんともいえないもどかしさというか落ち着かなさというか、そういう感覚は、昔、憲正さんの緊急手術が決まってその連絡を受けて新幹線に飛び乗った時以来のことだ。それでもあの時はまだ生存の予測が可能だったからこの度よりは気持ちに若干の余裕があった。
坊主が賛美礼拝というのもおかしな場違いかもしれないが、歌の意味はわからなくても心が静かでいられるということはいいことだ。
いつの間にか眠っていて、気がつけばあと少しで新宿へ到着の時間だった。

新宿バスタから重たい荷物を引きながら地下通路をJRの南口まで移動して、そこから電車を乗り継いで怜子さんの住む最寄り駅へ降りると、傘が必要なくらいの雨が降っていた。
石見銀山を出発して高速バスへ乗り込むまでは良い天気だったのに・・・とにかく、私が大事なことに関係すると、かなりの確率で雨になる雨男であるようだ。
荷物を引いて抱えて雨に濡れながら青梅街道を渡ってガスタンク脇から石神井川に沿ってしばらく歩いた。見下ろすと水面のあちこちで雨跡の同心円が次々と重なり合って広がっている。久しぶりの石神井川は流れが絶えて澱んだ水溜りにしか見えない。
そういえば、冬の東京は雨も降らなくて毎日肌をさす冷たい風ばかりが強かった。
まだ貧乏学生でワイフと付き合っていた頃、ワイフの実家で数え切れないほどの夕食や朝食を食べさせてもらったし、お風呂に入ることも出来た。
貧乏は今も変わらないが、怜子さんの手料理を味わうことはできなくなった。

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2020-02