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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

最後の蕗 

2020/05/22
Fri. 18:27

寒くて目が覚めた。
町並みの川下から車が近づいて吉田家の隣あたりで止まった。しばらくして木製のポストが「カタン」と鳴った。新聞を投げ込んだのだろう。
「最近、彼女新聞読んでるのかなぁ?」
もう新聞を読まなくなって随分経った。だから吉田家で新聞を読むのはワイフしかいない。昔は夕食が終わって寝る前のひと時ほど、洗い物の食器を片付けたテーブルへ新聞を広げていた。子どもたちが一人暮らしを始めて家を出てからのワイフは、夕食のあとテレビを見ている時間のほうが増えたような気がする。新聞もテレビ欄くらいしか見ないのだったら購読をやめてもよさそうな気がするのだが、新聞屋さんとの付き合いに義理立てでもしているのだろうか?彼女の考えていることはよくわからない。
この寒さはもう一週間くらい続いている気がする。
陽が落ちて真夜中になると一気に気温が3〜4℃くらいまで下がる。寒くて早くに目が覚めてオシッコをしてから二度寝しようと思ったがやめた。午前中に三十五日小練忌の七日努めがある。一度寝たら寺までの通勤坊主を遅刻してしまいそうだ。
しばらく続いていた梅雨のような雨降りがやっと終わって、石見銀山の町並みから東の空を見ると久しぶりに青空が広がっていた。

しばらく雨が降り続いていたから蕗を採りそこねている間に春の草が一気に伸びて蕗の葉が埋もれてしまった。
七日努めから帰って着物を脱いでコーヒーを飲んで少し休憩していつものつなぎ作業着に着替えた。
本堂の東側から庫裏の西側の端まで草刈りをしながらついでに蕗を採る。
草刈り機には笹刈り用の刃がついたままになっているが取り替えるのも面倒なのでその刃をそのまま使い続けることにしてグラインダーの方へダイヤモンド砥石を付け替えて目立てをした。
今年の蕗もこれが最後になる。
昨年は入院中で蕗の収穫が出来なかった。若い頃は蕗の美味しさもまったくわからなくて箸をつけることも殆どなかったのに、この歳になると味覚や好みが変わったのだろうか、あの蕗独特の青臭さが美味しいと思うようになった。
「もう、時期が過ぎとりましょぉ〜が?これからは虫が付きますけぇ〜・・・蕗ならコッチよりアッチの田の畦にマゲなのがまだありましょう・・・」
己バエのマーガレットを避けて草刈りをしながらアチコチに己バエの蕗を採りあつめていたら、いつも万善寺の営繕奉仕をしてもらっている保賀のお檀家さんが田仕事の手を休めて心配の声をかけてくれた。
「ありがとうございます。気になってたんですが雨が続いて採り損ねて今になってしまって・・・よさそうなものだけでも選んでみようと思って・・・」
さすが、年季の入った百姓のプロは保賀の自然を熟知していらっしゃる。
小一時間くらいほど草刈機を回しながら蕗を収穫した。これだけあったら伽羅蕗にしたものを関東で不自由に自粛している娘たちへもお裾分けできるだろう。
知らない間に随分と陽が長くなった。寺の境内から猫が消えてから戻ってきたスズメたちがやたらとうるさく鳴いていた。何処かで蛇でも出たのだろうか・・・

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