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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

バリアフリー 

2014/06/19
Thu. 09:49

部活帰りのキーポンを自宅前で降ろして、そのまま結界君を九州へ走らせた。
彫刻仲間のK君から作品台とパーツを頼まれて、それが出来たので持っていった。
実際に彫刻の現物を見ていないからうまく組立つかもわからないし、まずは自分の目で確認した方が手っ取り早くて納得する。

まだ若いK君は、交通事故の被害に遭って車椅子での生活になった。
数年は彫刻制作も出来ないままリハビリに励んで、そのうち制作を再開して、今度は個展の計画を立ててそれを実行に移している。
今回の私の仕事も個展出品の彫刻パーツを造ることだった。

キーポンを連れて帰ったあとからの出発だから九州へ着いたのはすでに日の変わった深夜だった。
ひとまず予想通り組立ててみたが、どうも造りが華奢でいまひとつ納得できない。
いろいろ工夫してみたが、応急の仕事になりそうなので、一式島根までもって帰ることにした。
真夜中なのにコーヒーをいただいたり、お弁当まで用意してもらったりと至れり尽くせりで恐縮してしまった。

とんぼ返りで、アチコチ交差点の点滅信号が平常作動に切り替わる前に石見銀山の自宅へ帰宅した。
朝ご飯を食べてノンビリしようとトイレ読書を楽しんでいたら、「おとうさん行くよ」と声がかかってあわてた。
としも歳だし完全徹夜だから結構疲れてすぐ寝たかったのにしかたがない。
いつもと変わらない1日がはじまった。

久々の長距離で時間もたっぷりあるし、運転しながら色々なことを思った。
車椅子暮らしのK君は、みたところ不自由ながらほとんど自力で制作を続けているようにみえる。
ものすごい集中力と持久力だと思う。自分にはとても出来ない。
自宅裏にある彫刻の作業場へも昇降機を操りながらほとんど自力で移動している。
バリアフリーの支援も最小限のようで、至る所に段差がある。

そうしてみると、万善寺の段差もかなりのものだと思う。
腰が曲がって膝が伸びたおかみさんは、アチコチの段差をはい上がったりはい降りたりして全身運動している。
畑の坂など芋虫のように地べたを移動している。
老僧はそれなりに足もシッカリと歩いているが、頻繁にふらついていてハラハラする。
背も縮んで式台が膝より高くなった。
本堂は高床だから庫裏と結ぶ渡り廊下は階段ばかりだし、蔵の出入りも上下激しいし、六地蔵さんの通りまでは急な坂もある。
そうやって一つ一つ思い出してみると、万善寺の造作で半世紀の間にバリアフリーになった場所など一つもない。
老僧に歳の近い組寺のご住職も、最近寺内のアチコチでつまずいてよく転ぶようになったそうだ。

普通に不便に暮していると、不便も普通に色々工夫して乗り切っているように見える。
至れり尽くせりのデイサービスや介護施設を利用しているお年寄りは頻繁に転んでよく骨を折るらしい。
知合いの介護士さんがそう言っていた。
バリアフリーに慣れてしまうと、日常の暮らしで普通によくある少しの段差に履物や足の指が引っかかって転ぶことが増えるようだ。

そういえば、私がお邪魔するK雲寺とかK洞寺とかの古い石段は、見事に高さも石組みもバラバラで足の運びに苦労する。
聞くところによると、由緒ある古刹古寺は参拝の老若男女へ注意喚起のためにわざとそのような石段を造ることが習わしのようなものであったという説もある。
時間をかけてでも這ってでもお参りするという信仰心の強さが、かえって安全に慎重に我が身を守ることにもなっていたのだろう。

何事も至れり尽くせりが良いとも言えない気がする。分相応に歳相応に自身を慎む所作をわきまえることがあっていいと思う。
万善寺の老僧夫婦には見て見ぬふりで手を貸さないことにしている。
いつまでもそれなりに自力で生き抜いて元気に死んでいってもらいたいと思っている。

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