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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

撥遣(はっけん) 

2014/09/23
Tue. 07:09

彫刻制作の仕事をひと休みして、撥遣のおつとめに出かけてきた。
「撥遣」とは(はっけん)と読んで俗に言う「御霊抜き」のこと。
寺ごとに微妙な作法の違いがあって、代々師匠から引き継いだ秘法になっていることが多い。

万善寺もいつの頃からか引き継がれた作法らしきものがあったようで、老僧が引退する前には何度かその話を聞かされてきたが、すでに若干のボケも入ったりしてからのことだったので、なかなか正確に引き継ぐことまでには至っていない。
撥遣に必要なお経は経本に載っているが回向まではなかなか見つからなくて、老僧の書いた筆文字を解読したりしてワープロで打ち変えたものをファイルするなど、なかなか引き継ぎに苦労している。
本当は、本堂の須弥壇へ向かって口移しに練習できればいいと思うが、東堂さんと一緒に本堂へ行くと、途端に現役導師に変って自分の世界に入り込んでしまう。
よく言えば彼にとってはマイペースに自身の修行世界に入っているのだろうが、教わろうとしている私にとってはなかなかツボの押さえ所が掴めなくてダラダラと流されてしまう。
そのうち、興味津々のおかみさんがヨチヨチと這ってきたりしてもう収拾がつかなくなる。
だいたいがそんなふうに過ぎてしまうし、とにかく東堂さんが生きているうちに出来るだけ多くの情報を収集しておこうと思うから、このところドライブにつれだして、世間話の間にさりげなく作法を聞き取ったりしている。

さて、その撥遣のこと。
独身一人暮らし家長の死亡で絶えてしまった家の取り壊しが決まって、そのまえに仏壇や仏具を親族に引き取ってもらうことになったわけだが、残された身内親族の間で仏事関係の一連の引き継ぎが躓いてしまった。
結局は京都住まいの末の弟が引き取るのがスジだろうということになって、彼の仕事の都合で日程が決まって、私が呼び出されることになった。
その彼は、私より10歳近く年上で、小さい頃には時々絵を教えてもらったりして遊んでもらうほどの仲だった。
その後、彼は好きな絵の道へ進学しようと京都へ出て勉強して今は美術系の予備校や趣味の絵画教室を経営して先生をしている。

島根の田舎からそうやって美術系へ進む連中など一握りのことだから、噂話のネタになったりして、けっこう知る人ぞ知る人(ややこしい・・)になっている。
そういう一風変った人生を歩いている人のことだから、仏事に関しての持論もあって彼なりの宗教への解釈も加わってなかなか難しい状況を背景に、撥遣をお務めすることになった。
こういう時は、とことん具体的に目に見える形でひとつひとつの所作に意味を込めてyes・noをはっきりと示しながら粛々と仏事を進めていくことがいいと思っているから、そういう態度でおつとめした。

まともに真っ直ぐに修行を重ねて裏表のない清らかに暮す坊主であれば、こういう撥遣の心身負荷もさらりと逃がせるが、私のような軟弱ヨレヨレ坊主はなかなかそういうわけにもいかない。
おおよそ半日がかりのおつとめにグッタリ疲れて、肩の重さもいつになくズシリとこたえる。
彫刻制作の過酷な労働も軽く感じるほど心身ともにとにかく疲れた。
帰宅して遅めの昼食のあと、少しの休憩のつもりがいつの間にか爆睡になっていて、気がつくと夕方だった。
その夜、石見銀山の自宅近所のご高齢のおばあさんが闘病の末亡くなったと知らせが入った。
万善寺地蔵縁日の夜が通夜になるだろう・・・

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