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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

それぞれの秋 

2014/10/29
Wed. 09:14

石見銀山を留守にしている間、四畳半のオヤジの書斎は完全にキーポンと、それに日頃は出入り禁止のクロが乗っ取っていた。
彼女とクロの痕跡が部屋中に散乱している。
久しぶりに吉田家の日常が戻ってきた感じだが、なにかゆっくりと気が休まる雰囲気になれないところは、まだ島根での彫刻搬出作業が残っているからだと思う。

東京から帰った朝は、そのまま溜まった仕事や用事を片づけて石見銀山の周辺をウロウロした。
昼過ぎにキーポンから着信が入った。
ちょうど学校の近くにいたから用事の途中で彼女を拾って、それからアチコチ回って帰宅したら午後のティータイムどき。
昼食がまだだったから二人で遅すぎる昼ご飯を食べて、それから赤来高原へ走った。
自治会の集金を済ませて、老夫婦の機嫌を伺いに寺へ寄った。
山の日暮れが早くなって真横からの夕日が目に眩しい。
このところ、年々というより日に日に老化している老夫婦の挙動を見るのがつらくなる。
子供の私が顔を出すと途端におかみさんがしがみついてくる。
東堂さんは急に男の威厳を取り繕って焦りはじめる。
どう考えても自分がいない方が平和な寺暮らしになっていると思うが、世間はなかなかそういうふうに見てくれないだろう。
厳しいようだが、年寄りが寄り添ってそれなりに工夫しながら元気で暮すには、そのくらいほったらかしにしておいた方がいいと思っている。
変に手取り足取り甲斐甲斐しく接してしまうとどんどん甘えて何をするにもまずはそこから物事が始まるようになる。
あれだけ訪問介護を拒否して嫌っていた二人が、この2年の間に手のひらを返したように甘えてすがりついている。
職員はそれが仕事だから面倒がらないで丁寧に接してくれる。
老夫婦にはそれが何より助けになっている。
行商の魚屋さんの訪問もそうだ。
1ヶ月にするととんでもない額の買い物をしているが、結局は老夫婦のプライドを守る保証のようなものだ。
親子の関係ではお互いにとてもそこまで辛抱できない。
他人だから出来ることで、お金の代償があるから出来ることだ。
日暮れの眩しさがおかみさんの顔を容赦なく照らす。
延々としゃべり続けるおかみさんの話を背中で聞きながら結界君に乗った。

帰宅すると玄関が真っ暗だった。
四畳半の書斎はオヤジの布団が敷きっ放しになっていてキーポンが爆睡している。
受験が近づいて進路に悩んでいる様子がうかがえる。
それでもあいつは頑固だから自分で勝手に思い詰めて相談もかけてこない。
なるようにしかならないことだし、私自身そうやって今まで生きてきた。
我が子のことだからだいたい事情がわかる。
親の都合だけですますわけにもいかないし、勝手に自分の都合で逃避するわけにもいかないからむずかしい。

六本木の彫刻展は、なかなか都合よく一区切りふんぎりがついて良い節目になった。
身内のことでいろいろあるものの、それはそれぞれお互い様で避けて通ることにもならないから、1年に1回くらいは自分の思うようにやりたいことが出来ていればそれだけで少しの救いになることがわかったような気もする。
これから先いつまで続けられるかわからないが、とりあえずはなにかしら踏ん切りがついた感じで、それがわかっただけでもちょっとすっきりしたかな。

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