FC2ブログ

工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

技を越える 

2014/11/05
Wed. 10:35

キーポンを学校まで送ったあと、朝のひと時をくつろいでいる。
だいたいがヒマにしているわりには最近まで毎日があわただしく過ぎていた。

三連休も過ぎて石見銀山は少しずついつもの様子を取り戻しつつあるが、それでもまだ大型バスの観光客が時間差でおしかけてくる。
そのほとんどは観光会社の巧妙に仕組んだ平日格安ツアーにまんまと乗っかってしまったリタイヤ組の方々である。
永年勤続三十数年と思われるオヤジさんが延々とほったらかしていただろう奥さんと一緒に何十年ぶりかに運転のレンタサイクルに乗ってフラフラしながら町並みの道をにらみつけて石見銀山を上り下りしている。
バスの集合時間があるからと観光ガイドさんの後ろをウォーキングスピードで汗をかきながら団体さんが歩いている。
なかなか観光するのも楽ではないなと思いつつ、コンサートの開催を目指して少しずつ暖機運転を始めたところだ。

茂木なんとかという評論家か研究者かなにかがいて、その人の脳の思考の事を書いた文章を読んで小論文にまとめろと云う受験用課題をもらったキーポンが、私の隣でしばらくウンウン唸っていたが、そのうち静かになって気がついたら大口あけて寝ていた。
一文字も書かないままだったからめんどくさいと思いつつ起こしたら、声に出してその文章を読みはじめた。
耳から入る文字は、オヤジの脳みその想像力をとんでもない方向へねじ曲げてしまう。
はじめて聞く日本語のフレーズが飛び交って支離滅裂だ。
「これなんて読むん?」
時々私に質問してくるが、国語も漢字も英語も単語も苦手なオヤジは解るはずもないので適当に感で答えてごまかしていると、そのうち諦めて電子辞書を持ち出した。
「そんな便利なものあるんだったら最初から使えや!」
一瞬そう思ったが、一応受験生だし不安に揺れ動く心情を刺激してはいけないと思ってググッと我慢する。
オヤジの書斎は完全に乗っ取られた。
こういういいかげんな環境と勉強ではなかなか結果も出せないだろう・・・
それにしても、今どきの小論文教材はどうかと思う。
その茂木なんとかという人のこむずかしい文章など、そもそも1冊の本になって出版されていることそのものが紙の無駄遣いだ・・・といって、本にもなってないかもしれないけど・・それにしても人間が一生のうちに一度もつわかないような単語熟語を並べて悦に浸っているようなヤツに限って人間が軽薄だったり世間が小さかったりするんだよね。

私が学生時代、お父さんのように慕っていた先生がいて、その人は頑固者で癇癪持ちで気難しいからあまり人気がなかったのだが、私はむしろそのくらいの方が正直に生きているように見えて好ましかったりもしたから、付かず離れずさり気なく仕事のお手伝いなどさせてもらっていた。
卒業するか大学院へ残るか迷いつつ、何もしないわけにいかないからと受験勉強を始めた頃に文章を書くことがあってその添削で云われたことはいまでもだいたい忘れないで覚えている。
「考えることや工夫することは自分の頭の中ですることで、人に解説したり見せびらかすことじゃないよ。お前のは何処かから気に入ったものを見つけて格好つけて写してるだけだな。文章に気持ちが入っとらん」
作品制作のお手伝いをさせてもらっている時も似たようなことをよく云われた。
「モノを造るということは技術が上手なだけじゃダメなんだよ。そればっかりだとなにも越えられないよ。伝統は伝承と違うんだから」
難しいことを考えて難しいことを云うことはかえって易しい。
受験勉強で散々描いたデッサンが、作品らしきものを造り始める頃になってジャマになりはじめたことがあった。
モノを写し取る技など実はどうでもいいことで、本当に大事なのはモノの心柱や本質を正しく見極めることだ。

「茂木さんという人は、普通には使わない難しい言葉をいっぱい使って、(自分はこんなに偉いんだぞ!)と言いたいためにこの文章を書いたんだなぁと思いました・・・とでも書いとけ」
「お父さん、さすがにそれは出来んわ・・」
・・・パジャマ代わりのトレーナーが珍しくオヤジとおソロになって盛り上がっていたキーポンだが、一方なかなか常識者でありました。

IMG_1040.jpg

[edit]

CM: 0
TB: 0

page top

この記事に対するコメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://tetujin29.blog31.fc2.com/tb.php/1776-41b2207d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

2020-08