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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

棚経 

2010/08/06
Fri. 00:33

毎日良い天気が続いています。
世間では暑い暑いの声が蝉時雨のように飛び交っていますが、私がこのところ訪問する棚経の各お宅では、おおむねこの猛暑を好意的に受け止めていらっしゃいます。
お百姓さんにとっては、春先の悪天候でさんざん悩まされたあとの猛暑が天の恵みになっているようです。

昼間の棚経つとめは身体にこたえるので、できるだけ朝の涼しいうちにすませたいと思ってしまうのはしかたないこと。
朝の7時にはもう家を出発して、幾つかの山と谷を越え、目的地にたどり着いたのが8時30分。
そのあたりの集落は、中国山地のほぼてっぺんの辺りで、山を越えると広島県になります。
その日棚経をつとめるのは集落の中の7軒。
行って帰るだけで半日仕事です。

私が小学生の頃は、いまの老住職が運転する自転車の荷台に乗ってそこまで通っていました。
住職がバイクの免許をとってからは、自転車をこぐのが私に代わりました。
その頃の棚経は、一集落でだいたい20軒位は普通だったので、住職と手分けして小坊主なりに鐘や木魚を鳴らしてのおつとめは夏休みの日課のようなものでした。
住職は機動力を発揮してお昼過ぎには棚経終了。
少年の私は大汗かいて舗装もない山道のアップダウンを自転車こいで4時過ぎに寺へ帰宅。
今では考えられないほどの過酷な毎日を過ごしていました。

家々では、だいたいお年寄りが孫の守りをしながら一年ぶりの坊主の訪問を心待ちにしていて、お経もまだ終らないうちから湯茶の準備をしたり、冷やしソーメンや、スイカなどの果物をそろえたり、ジュースやカルピスと、とても手厚いおもてなしを受けたものです。
「出されたものを残すのは失礼だ」とおしえられた吉田少年は、遠慮しながらも、お年寄の一年分のお話しを聞きながら、その家の孫の突き刺さるような視線を感じながら、残さずたいらげて次の家へ向かう・・といった毎日が続き、そろそろお盆の三ケ日を迎えるぞ・・という頃には、完全に胃腸障害でダウン寸前のヨレヨレ状態。
だいたい棚経つとめの終盤は、「肝心の時に役に立たん!」と叱られながら、本人は絶不調で胃腸がひっくり返り、上から下からの大騒ぎをしながら青い顔をして、這うようにして棚経をつとめあげたものです。

そして今では家が無くなったり無住で荒れ果てたりして檀家さんの顔も思いだすことも出来なくなり、残った7軒も、思い出は仏壇のお位牌と鴨居の写真に納まってしまいました。

これから、8月いっぱい「棚経(たなぎょう)」の毎日が続きます。
最近は仕事でお留守のお宅もいっぱいあって、誰もいない家の仏壇に向かって一人でお経をあげることも増えました。田舎とはいえ時代の変化を身をもって感じる一ヶ月になります。

IMG_8426.jpg

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