工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

棚田の情景 

2015/08/24
Mon. 12:09

富山の棚田の一角に巨大な椎の木がある。
1993年に大田市の天然記念物に指定されたようだ。
元は地元の氏神かなにかの祠のご神木であったのだろう。
周辺一面棚田のそこだけが手付かずの小山のようになっていて、そのてっぺんの平地いっぱいに椎の木が枝を広げている。
整備すればけっこう遠望の姿も雄大に見えて、富山集落のそれなりの憩いの名所にもなる気がするが、今の世の中のことだから身銭を切ってまで勤労奉仕で整備するような有志も集まらないだろう。

富山と書いて(とみやま)と読む・・・とは、ずいぶん前にも何度か書いた気がする。
山あり谷ありのアップダウンが激しい土地で、現在の大田市行政で区分けされた富山町はとても広い。
だだっ広いだけの平地ではないから、平らに延ばした渓谷の表面積はかなりのものだと思う。
棚田の方は、昭和から平成の農地改革で耕作しやすいようにそれなりに几帳面に区画整備されているものの、昔ながらの畦道をどうにも手のつけようがないまま放置されてしまった場所もけっこうアチコチに残っている。

秋雨前線の勢いが弱まって晴れ間が覗きはじめたある日、富山町をひと回りして取材した。
お盆のあいだは、万善寺に缶詰め状態だったから、身も心も開放されて時間の過ぎるのが早く感じた。
不覚にも坊主の白鼻緒の雪駄を履いてそのまま出かけたものだから、あまり茂みの奥まで立ち入る事も出来なかったが、それでも富山の景観を確認する事くらいは十分にできた。

見渡した限り、この富山の棚田は、このまま稲作を続けるとしたらせいぜい50年が限界に思う。それほど耕作放棄地が点在している。
個人農業従事者の組織化が難しいということがひと目で理解出来る。
耕作農家がひとつになって我が土地の活用を目指さないと、結局国や行政からの補助金にすがった年間収入に頼るしかなくなってしまう。
怪しげな彫刻家だったり、なまぐさい坊主ごときが偉そうにこんなことを言っても何も変るわけもないが、それでも何かこの今の豊かさの残る景観が、もう一歩でも情景に踏み込めるまでのきっかけをつくれたらどんなにステキな事だろうと思ってしまう。

空の青に秋の深さが増してきた。
早稲の棚田には、そろそろ稲穂が頭を垂れはじめている。
谷からの上昇気流でホバリングしている鳶がやたらと大きく感じる。
一帯の棚田に人影はない。
ついさっきまでバイパスの拡幅工事でユンボが絶え間なく動いていた。
平日の昼間から首にカメラをぶら下げてプラプラと雪駄で歩く坊主頭は、きっと強烈に怪しいヤツに見えているのだろうなぁ・・・

IMG_0786.jpg

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