工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

放射冷却の日曜日 

2015/12/20
Sun. 23:58

万善寺の朝は放射冷却でかなり冷え込んだ。雲一つない青空が広がっている。
結界くんには霜がびっしりと張り付いていていた。今年最後の法事になるので、朝から頭陀袋をまとめたり塔婆を用意したりする間、暖機運転で霜を溶かした。
冬の時期のこういう時はスリップに気をつけなければいけない。
境内から参道へ降りるところが朝の太陽に照らされてキラキラ光っている。まずはクロックスで状況を確認した。万善寺参道が冬の一番の難所になる。ひと晩の間にどっさりと雪が積もったりすると、もう車を下の道まで下ろすことができなくなってしまうから夕方の天候には敏感になる。
島根県は裏日本でもそれほど雪国というわけでもないし、この近年は雪も少ないから比較的ラクに冬を過ごしているが、それで安心して気を抜いてしまうと大変なことになる。
大正生まれのおかみさんが、今度の雪で早速参道の雪かきにでかけた。私が少年時代はまだ国道も砂利道で自家用車を持っている家など集落に1軒もなかった。冬の交通手段は路線バスくらいしかないない時代の移動は自分の足に頼るしかない。彼女は、そういう頃から雪が降ると参道の雪かきを欠かさないで、それが日課にもなっていた。
長年続けた習慣というものが歳を重ねると共に頑固な意地に代わって肉体の衰えと精神感情のズレが修正できないまま無駄に重労働を繰り返してしまう。
タオルを頭に姉さんかぶりで巻きつけ、くの字に曲がった腰と膝が固まって棒のようになった足でヨチヨチ蠢きながら雪かきをするおかみさんの姿には鬼気迫るものがある。90歳を過ぎたおかみさんの雪かき姿を遠くから見ると、横溝正史の「悪魔の手毬唄」を思い出す。あの峠ですれ違うおばあさんの様子が重なってくる。

まだまだ年内に済ませておかなければいけない用事が残っている。
おかみさんを一人寺に残して、夕方になって石見銀山の自宅へ帰った。
行きつけのガソリンスタンドから会員割引のメールが届いていたので、空になった灯油缶を全部積み込んで大田の市内へ走った。
年末の日曜日だし、きっと混んでいるだろうなぁと覚悟して出かけたらそうでもなくて、簡単に給油が終わって、灯油をセルフで入れていたら、隣から声が聞こえる。
「せんせぇ~、先日はお世話になりましてぇ~」
まさか、こんなところで私に向かって「先生」などと呼ばれることなどないと思っているから、はじめは誰か他人のことだろうと聞き流していたが、しつこく呼びかけてくるので振り向いたら地元で頑張っている女流彫刻家のノリちゃんの旦那だった。
「なぁ〜んだ、はるちゃんかぁ〜・・こちらこそお世話になりっぱなしでぇ〜」などと、灯油を注ぎながら話していたら、今度は反対の隣へノリちゃん本人の赤いマーチが入ってきた。仲の良い夫婦だ。
灯油の給油所で両側からはるちゃんとノリちゃんの夫婦に挟まれて「先生」などと呼ばれている年の瀬の日曜日の夕方・・・何か自分のまわりだけ世間の慌ただしさがウソのようにゆったりと静かに過ぎているように錯覚した。
わがままオヤジの身勝手な都合であれだけ迷惑をかけて振り回してしまっているのに・・
みんなの優しさのおかげで今年もそれなりに満足の仕事ができた。
ありがたいことだ。

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