工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

量より質 

2016/02/27
Sat. 09:35

夜のうちからロフト部屋の天窓を強い風がたたきはじめた。
なんとなく眠れなくなってシュラフの中で蠢いていたら、居間の柱時計が3時を打った。
石見銀山だと、そろそろクロが起きて吉田家の夜回りをはじめるころだ。
朝方になって、知らないうちに二度寝をしていた。
毎日6時半になるとケーブルの有線で小学校の校歌が流れてくる。
数年前までは、子供たちの可愛らしい合唱だったが、近年は上手なピアノの独奏に変った。
だいたいはそれで目覚めるのだが、二度寝の今朝は全く聞こえないまま寝過ごしてしまった。

3畳の即席書斎へ移動する途中に、毎日香のかおりがほのかに残っていた。
おかみさんの日課で憲正さんへ線香を供えたものだ。
朝になっても強風がおさまらない。
灯油ストーブに点火して、本堂へお参りして知人から頂いた高野山の線香を本尊様の須弥壇へお供えする。
憲正さんの頃は、線香だけでも毎日10本近くお供えしていた。
貧乏寺で高価な線香を湯水のように消費されては困るから、彼が気付かない間にホームセンターで安売りしている時を狙って買いためたお徳用お墓線香を補充し続けていた。
この、お墓線香は杉葉を粉末にして練り固めたものがほとんどだから、1年中朝っぱらから除虫菊の蚊取り線香を本堂でくゆらせているとたいして変らないようなものだ。
もっとも、お墓線香で蚊の駆除になっているかどうかは知らないけど・・・本堂で殺生するのもどうかと思うし・・・
先代から引き継いで万善寺を守りはじめてから、少しずつ自分流に本堂の日課を修正している。
この線香も同じで、私はどちらかというとせっかく結界の中で仏様を守って暮すのなら「質より量」よりやはり「量より質」を目指すべきだと思う。
別にお金の高額を望むこともないが、やはり1日の始まりは格調高い香からスタートした方が心地いい。
それに、上等のお香にはそれなりの説得力もあって、たった1本の線香でも、その香は締め切った本堂で次の朝まで引き続いて残っている。
毎朝、仏の功徳を嗅覚で感じることが出来るということだけでもありがたいことだ。やはり、杉のヤニくさい臭いとは香の質が違う。
たった1本の線香だけのことだが、それほどのことで自分の気持ちを左右に動かしていることになる。

さきほども、一本の高野山線香をお供えしてご本尊様へ手を合わせた。
ふと、倉敷の冬の青空を思い出した。
万善寺から結界君でせいぜい3時間も走れば倉敷に着いて、そこには青空に向かってオリーブの木が葉を広げている。
寺のガラス窓の向こうでは厚く広がった曇り空から時折舞い落ちる雪が強風にあおられている。
オリーブの木は島根県ではうまく育たないらしい。

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