工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

保賀のカラス 

2016/03/09
Wed. 11:09

寒いのか暖かいのか曖昧でなんとなく寝苦しいままの夜が明けたら、本格的な雨になって保賀の谷には霧が広がっていた。
本堂の北側には屋根からのゆきずりがまだ残っている。こうして雨が降り続くと、それもやがて溶けて消えてひと冬の山のゴミだけが残る。今年は前住職が亡くなってはじめての春だから、今までとは営繕の様子が少し違ってきそうだ。

本堂の大工仕事も朝早くからはじまって本格的になってきた。
本尊さんへお参りすると、ひと晩のうちに香のかおりに変って建材の杉のかおりが満ちている。ひと昔前だったら桧とか欅とか、そういった材料を使うべきだろうが、そこまでの財力もないし人望もない私には、杉の木くらいが身の丈でちょうどいい。

「晴れとる時でなけりゃぁゴミが燃やせんけぇ〜」といって、おかみさんが畑の側に瓦を重ねて作ったゴミ焼き場が今でも使われている。
ひと頃自治体の指導でゴミの分別が厳しくなったことがあったが、その時も回覧板の分別協力の告知を無視して、火のつくものは全て徹底的に燃やしていた。山のゴミを燃やすのとは訳が違う。私がいてもいなくても関係なく今でもその行為は変らないで続いている。
おかみさんには頑固なところがあるから、息子の言うことの99%は聞く耳を持たない。
最近は、地域の付き合いや寺の行事などでも年寄り独特の頑固な気丈さが目に付くようになって、私ばかりでもなく四方八方に迷惑がかかって付き合いが難しい。

保賀の谷にはもう何年も前からつがいのカラスが仲良く暮している。そのカラスがおかみさんのヨチヨチとした行動を空から眺めていて、時々ちょっかいを出しているようだ。
「燃やさにゃぁいけんゴミ袋をせっかく集めて持っていきょぉ〜ったら、カラスがくわえて散らかしてしもぉ〜て、やれんことんなってしもぉ〜たが」
そういう話題を夕食の時に持ち出すから私もかなわない。
結局、散らかったゴミは風に吹かれて雨に降られてあちらこちらへ飛散してしまったようで、そう言えば雪が消えた境内の端の吹きだまりへスチロールやビニールが溜まっていたなぁと思い当たる事もあった。

私が見るに、保賀のカラスはとても頭が良くて人間の暮しぶりをかなり冷静に観察しているように感じる。
都会のカラスのように図々しくもないし、悪食で卑屈でもない。厳しい山陰の中国山地の気候にそれなりに順応しながら、人のスキを見てほどほどにあそびわるさをしながら、付かず離れず微妙な距離を維持して暮している。
私は、彼等を見かけると出来るだけ近所の子供に声かけするような感じで話しかけるようにしている。もうかれこれ3年くらいは続いているだろうか。昨年あたりから、彼等が私のことを何かの意志を持って認識しているということに確信が持てるようになった。
時々、視線があう事もあるし、面倒臭そうに鳴き返してくる事もある。
私が云っている内容のことまでは分からないだろうが、ひょっとしたら、今のおかみさんより、カラスの方が私の気持ちを理解して聞き分けてくれているのかもしれない。

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