工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

吉田満壽美の彫刻 

2016/10/01
Sat. 22:35

島根県女流彫刻家ではブッチギリの吉田満壽美が、久しぶりに野外彫刻へ挑戦した。
制作時間も最近では珍しいほどタップリと用意して、ジックリと彫刻に向き合っていた。

常々、彼女の彫刻に耐久性とか耐候性が加わると、一気に彼女の世界が大きく広がると思っているから、もう何年も前からことあるごとに呪文のごとく「野外に出そうよ・・」とささやいていた。
色々と条件が整って、今年になってから野外彫刻へ彼女の関心が向いた。
そして、一気に2点の彫刻を制作して、その一つはすでに徳島中央公園へ設置を終わった。
そちらの彫刻は、完全なパブリックスペースだから、期間中に何が起こるかわからない。
たとえば、落書きをされたり傷つけられたりパーツが無くなったり・・・際限なくネガティブなイメージが湧き出してくる。
野外彫刻というと、やはりそのあたりのフンギリというかオトシドコロがしっかりとして腹を据えて取り掛からないと気持ちが萎える。
これまで、あれほどしつこく野外を推薦しても聞き流していたのは、彼女なりの思い切った決断が出来ないでいたからかもしれない。

野外彫刻の素材というと、石とか鉄とかステンレスとかブロンズとか強化プラスチックとか・・・耐候性の強い素材がほとんどだが、吉田満壽美の場合は、いまのところウレタンに紙がほとんど。
今回の野外彫刻も、この素材感を壊さないように制作をしていた。
ある意味で無謀とも思われるほどの素材へのコダワリだと感心する。
彼女なりに、その素材に対して誰からも踏み込んでほしくない彫刻表現の可能性を強く意識しているのかもしれないし、他人に頼らないで自分で納得のいくまで素材と向き合って造形に仕上げていく制作スタイルを崩したくないところがあるのかもしれない。
ひとまずは今回の制作と野外展示でそれなりの結果が間違いなく見えてくることだろう。
そろそろ彫刻家としての作家年齢も半世紀近くなった今、ここで過去から続く一連の作風を守るか、もしくはそれを打ち壊すか、そういう岐路にいるような気がする。

一つ屋根の下でお互いの制作スタイルを横目で見ながらそれぞれのスケジュールで制作を続けていると、知らない間にお互いの造形に慣れてしまって新鮮な感動が薄れてしまっていたりする。
島根県のような文化の辺境の地で彫刻制作に踏ん張り続けることは普通に苦労するし感覚も鈍る。知らない間に自分の彫刻に満足して納得してしまっていたりして、造形への厳しい感覚が何処かに捨てられていたりする。
彫刻制作を続けるという行為が惰性で流れてしまわないようにしなければ、彫刻制作を続けているという意味が無くなってしまう。
いずれ近い将来、色々な障害がやってきて彫刻制作を断念しなければいけなくなる時が必ずやってくる。そのときになって、過去を懐かしんでニヤリと笑っていたいものだ。
吉田満壽美の踏ん張りは吉田正純の彫刻制作のエネルギーになっている。
そのエネルギーのおかげで自分の彫刻を造り続けていられる。

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