工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

「とみやま」に来て思う 

2016/12/23
Fri. 23:19

富山の報告書のことで、島大の新井先生へ依頼していた原稿が届いた。
当然のことであるが、さすがに大学教授となると内容もしっかりしていて読み応えがある。
報告書がシッカリ完成するのはもう少し先のことになるが、ひとまず、頂いた原稿だけでも先に読んでおいてもらうと嬉しいな・・って、友達の少ない吉田のブログだから限界もあるけど、まぁ、何もしないよりは少しはマシだろうということで・・

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「とみやま」に来て思う

国道9号線、大田市から山側に20分ほど上がったところ、「富山(とみやま)」には美しい棚田が広がっている。ここ富山の廃校になった旧富山小学校とその周辺で、地元の芸術家を中心に美術作品の展示とワークショップが行われているというので行ってみた。
日本の原風景のような里山の道を、休耕田のところどころに置かれた鉄や大理石、竹などの大型野外彫刻を見ながら登って行くと、旧富山小学校に着く。小学校の庭では作家が竹のオブジェをその場で公開制作し、玄関口では地元のお母さんや子供たちが、石を彫って頭像を作っている。校舎に入ると、やはり地元の皆さんが竹を細工して何やらオブジェを作っている。そこを過ぎ、たくさんの抽象彫刻や絵画作品を見ながら校内を進むと、教室では、それぞれのアーティストが一部屋ずつ丸ごと使って自由に創作した世界を繰り広げている。
美しい風景に溶け込む野外彫刻、いくつかのワークショップ、公開制作、教室を使ったインスタレーション(インスタレーションとは空間全体が一つの作品となっていて、鑑賞者がその中を巡って体験する現代美術の形式)などの作品鑑賞と制作体験ができる「とみやま彫刻-ものつくり学校」は、実に多彩で美術の面白さを堪能できる楽しいイベントだった。
この山間地域で行われているアートイベントが、伝統芸能などではなくて、現代美術を通して地元の住民との交流を作り上げていることは驚きだ。
しかしここに展示されている作品は、単に住民との交流の道具に使われている訳でもなく、また啓蒙的な目的で置かれている訳でもない。よくわからないと言われている現代美術を、余計な説明を加えず訪れる人に直接対峙させることで、その時鑑賞者の中に生まれる化学変化、それは多少の戸惑いとともに何か新しい世界を見た驚きだ-を生み出している。またそこでワークショップ等の体験型イベントも同時に行われていることから、訪れる人が楽しく交流し、また不思議な体験をしているうちに、自然に美術に親しんでしまうのだ。こんな双方向の提示ができるのは、今を生きる美術の楽しさと可能性を信じている人間だけだ。
またこのイベントは県内外のアーティストやその卵たちに自由な発表の場を与えることによって、若いアーティストを育てていることも忘れてはならないだろう。
一見のんびりと楽しげに繰り広げられているように見えるこれらのイベントは、実は多様な芸術性と緻密な企画力に基づいており、主催者である吉田正純氏とそのお仲間たちの美術に対する深い理解と知見、また人間に対する愛情によって初めて可能となるものである。
「とみやま」にこのイベントが続き、根を下ろすことを、そして来年もまたこの風景に会えることを楽しみにしている。

新井 知生
島根大学教育学部教授・画家
個展(銀座スルガ台画廊, Cast Iron Gallery, 島根県立美術館など)
グループ展(現代日本美術展, 安井賞展, DOMANI明日展 など) 
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