工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

雪駄がない 

2017/02/03
Fri. 22:54

通夜の夜は、万善寺頭上の星や月が今にも落ちてきそうなくらいすぐ近くで瞬いていた。
珍しく風もない2月の冷えた空気が冬空いっぱいに広がって、山陰の島根県の飯南高原は快晴だ。

坊主の必需品の雪駄が無くなってしまって苦労している。
気がついたのは1月の寒波がやってきた頃だった。
冬の間は長靴に改良衣という、なんとも奇妙なボウズスタイルで過ごすことが多いから、特に気にもとめないまま時が過ぎていたのだが、葬儀となるとそれなりの坊主らしい最低限統一性のあるファッションをキープしておかないと軟弱坊主がより軟弱に見えてしまうので、本気になってセッセとあちこち雪駄をさがし始めた。
寺に無いし結界くんにも見当たらない。
「ひょっとして、石見銀山の吉田家かも知れない・・・」
ふと、そんな気がしたので、荼毘のお経が終わって火葬場から改良衣に長靴スタイルのまま石見銀山へ直行した。

銀山街道から石見銀山の町並みへかけて、もう春がきたのかと錯覚するほど周囲の色彩が春めいて見えた。
吉田家の木戸を開けて土間へ入っても肌寒く感じない。
飯南高原の万善寺とここまで差がつくものかと、ワイフとネコチャンズの暮らしがうらやましくなった。
こうなったら、一日でも早くに万善寺の庫裏にしがみついている母親を見捨てて吉田家へ帰らなければいけない・・・というより、「帰りたい!」

テーブルいっぱいにワイフの世界があふれていて、私の痕跡は、かろうじて「吉田正純」宛の郵便物くらいしかない。
少し前の電話でワイフが、
「そうそう、コーヒーが届いてたよ。なんか袋に色々書いてあったけど・・」
そんなことを話していたのを思い出して、ワイフワールドを物色して、やっと深煎り焙煎のコロンビアとエチオピアを見つけた。
袋を持っただけで湧き上がってくる香ばしい香りが心地よい。
思わず雪駄のことを忘れてしまいそうになったが、気を取り直して当初の目的を物色するも、ついに見つけ出すことができなかった。
ある意味、雪駄のために片道40分の距離を往復したことは燃料の無駄以外の何物でもない結果となったが、一方、美味そうな倉敷森山珈琲を見つけ出すことが出来たわけで、その希少価値を加味すると、徒労や無駄は相殺できた気がしないでもない。
今まさに、通夜のあとの一杯の珈琲を入れてその香りに浸っているところだ。
明日はほぼ告別式といってもよいほどの略式葬儀がある。
喪主さんはじめ地域の事情もあるから仕方がないと割り切って粛々と乗り切るしか無い。
どうやら、今日の天気は明日まで続いてくれるようだ。
それだけでもありがたい・・・のだが・・・雪駄がない・・・どうしよう・・・

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