工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

真夜中のコーヒー 

2017/02/24
Fri. 21:09

万善寺の夜は、かなり激しい風雨が遅くまで続いていた。
通夜が終わって3畳の寺務所へ帰ると、さっそく母親の足音が近づいてきた。
私の寺暮らしではこういうことが頻繁で、とにかく落ち着かない。
特にこれといった用事があるわけでもないのに、いまだに親の子離れが出来ないまま、90歳を過ぎて、より過激に母の優位を振りかざしながら子供にしがみついてくる。
限りなくジジイに近いオヤジのボクは、いつまでも子供のままじゃないんだけどね・・・
なれない浄土真宗の、仏説阿弥陀経とか正信偈を必死でおつとめしてグッタリ疲れているボクのことなどまったく無視でからみつく母親には、どぉ〜も、こぉ〜も対処のしようがない。

麦とホップをたて続けに2缶空けて少し落ち着いて、お経本をチェックし直して、本葬の法式を見直していたら、ボタボタとユキズリの音がしはじめた。
そういえば、いつの間にか風雨の音も消えて静かになっていて、たぶん、その頃から雨が雪に変わっていたのだろう。
万善寺の本堂は、寄棟と方形をたして二で割ったような独特の作りをしている。
屋根を真上から見ると、限りなく正方形に近い形になっているはずだ。
その関係で、本堂の周囲へほぼ同程度のユキズリの山ができるのだが、西側に庫裏が続いているから、西のユキズリがモロに庫裏の壁を叩く。
3畳の即席書斎寺務所は本堂と庫裏を結ぶ渡り廊下に張り付いたような部屋だから、急勾配の本堂屋根から絶え間なく雪が擦り落ち始めるとやたらにうるさくなる。
一度気になり始めたら、集中力も消えて寝るしか無いことになるが、そのうるささでは素直に寝ることも難しくなる。
いつもだったら、このまま麦とホップをガブ飲みして無理やり酔っ払うか、アクション映画を観始めるか、そんなところだが、さすがに本葬の前の夜にはそういう気になれない。
曹洞宗の場合はだいたい法式を覚えているから良いが、やはり宗派が違うと磬子の打ち方や止め方も違うし、とろけきった脳味噌の反応が鈍くてなかなかすんなり頭に入らない。

深煎りの豆をミルで挽いた。
3畳にコーヒーの香りが広がった。
寺暮らしだと、だいたいこういう時は白檀香かなにかが香るのだろうが、私は、どちらかというとコーヒーが香り漂うほうが落ち着く。
一度沸騰させたお湯をしばらく冷まして、ゆっくりと豆を蒸らす。
このあたりの所作にコルトレーンあたりがさり気なくかぶさってくるともうたまらない。
世間では、カフェインがどぉ〜のこぉ〜の云うが、私には一向に差し支えない。
コーヒーを一口すすって、コンビニに寄った時に仕入れておいたドーナツを頬張る。
そうこうしている間に、ユキズリが気にならなくなってきた。
大衣や袈裟の確認などしてシュラフに潜り込んだ。

気がつくと外が明るくなっていて、遠くで鳴きあうつがいのカラスの会話で目が覚めた。
いつの間にか、寝てしまっていたようだ。

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