工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

彫刻の抽斗 

2017/03/06
Mon. 09:25

構想350日の彫刻をそろそろ造り始めようと、完成予定日の15日くらい前から準備し始めていたら、万善寺の用事が次々に入り込んで、見事に出鼻をくじかれてしまった。

自分の今までの彫刻家人生で唯一、展覧会出品をドタキャンしたことがある。
あれは、島根県へUターンしてまだ5年と経っていなかった頃だったと思う。
先代住職の憲正さんは、50歳を過ぎた頃に大病を患ってそれ以降の生涯は、常に何かしらの病気と付き合いながら通院と入退院を繰り返しながら無理をしない程度に住職を続け、結局90歳近くまで長生きをした。
私は、その憲正さんの初期の大病を契機に東京暮らしを切り上げた。
島根の仕事に落ち着いて、「さぁ、そろそろ制作を再開しようか!」と準備をはじめて何年かアレコレと造形に取り組んでいるうちに気持ちが彫刻に傾きはじめて、それこそ、今回のように構想◯◯日を過ぎて材料の準備も整って、あとは実材にとりかかろうという頃合いを見計らったように憲正さんが手術することになって、そのドタバタでどうにもこうにもいかなくなって、ワイフと二人して制作を断念した。
当時の展覧会事務局などで忙しくしていた新進気鋭の彫刻家へ、その旨を伝えたら、「そういうことも想定して、幾つかの彫刻を造りタメておくくらいでないとダメだね!」と軽く一括された。
どんなに工夫しても都合の付かない事情はいつどんな時にどういう形でやってくるか予測不能だ。そういう事態に備えて、あらかじめ幾つかの善後策を用意しておくくらいの余裕が大事だと、痛感した。
同じ間違いは二度としないように気配りをするようになってから現在まで、幸いにも自分の個人的な事情で展覧会のドタキャンをしたことは無い。

私に付かず離れず寄り添って彫刻を造り続けているワイフも、最近は彼女なりのペースを組み立てて制作に取り組んでいる。
搬入の日時が迫ってくると、吉田家の二人の彫刻家はそれぞれがそれぞれの事情で日常をやりくりして制作を続けることになるわけだが、さすがに今回の私は、次々に予期せぬ出来事が巡ってきて思わず挫折しそうになった。
それでも過去のドタキャンの時の一括があった御蔭で、何かの時の彫刻を幾つか造り貯めているから、ずいぶんと気楽でいられる。

今回の新作彫刻は、急きょ当初の制作予定を変更して、メインテーマにつづいて用意してある幾つかの系統から一つを選んで直感的に形を造り上げた。
知人の彫刻家から、「吉田さんは幾つかの抽斗を持ってるね。それも必要なことだよね!」と指摘されたことがあるが、まさにその通りで、まぁ、次の個展でもする時のテーマにでもいなればいいなと密かに溜め込んでいるへそくりのようなものが入った抽斗の一つを開けさせてもらった次第。
構想350日の彫刻は、ひとまずその系統の抽斗の方へしまっておくことにした。
時々中を覗いたり引っ張り出したりしながら、次の制作の機会を待つことにする。
今日中にワイフの彫刻が完成するはずだ。明日は搬入に向けて島根を出発する。

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