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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

絶滅の鍵 

2018/06/21
Thu. 23:59

いつもより少し遅れて吉田家を出発した。
梅雨らしくない爽やかな朝で、空気も澄んでいて気持ちが良い。

石見銀山の町並みから銀山街道へ合流してしばらく走ると、数年前まで瓦粘土を採土していた丘陵へ出る。まだ採土すれば粘土の埋蔵量が十分あるはずだが、神戸の大震災以来、瓦の重量が原因で家屋倒壊の被害が広がったというような風評被害が全国に広がって、島根県の瓦産業が一気に衰退した。
石見銀山で銀の採掘をしなくなってから後、周辺に広がる良質の粘土を原料とした瓦産業が発展した。島根県の山間部を東西に伸びる中国山地は、風化の進んだ古い土地で、様々な工業製品の原材料が豊富に点在している。そういう良質の材料を求めて職人集団が集まって、やがて工業地帯が広がって職を求めて労働者が集まって町が出来る。江戸時代の銀山街道は、そういう小規模な集落が広島県の瀬戸内まで続いていて、今では想像できないほどの賑わいだったはずだ。
平成時代の今は、古くからの植林も荒れて、人手の入らないまま原生林に戻って手の入れようも出来ないまでになっている。
人の入らなくなった山ではサルとかシカとかイノシシとかツキノワグマなどの動物が繁殖して、今は人間の暮らしを脅かす獣害として駆除の対象にまでなっている。

曹洞宗には十重禁戒の教えがあって、その第一に不殺生戎を挙げてある。
ダイレクトに意味を解くと「殺生はダメ!」と受け取られがちだが、その真意はもっと深いところにあって、〜人が生きるためには殺生を避けることが出来ない〜という前提が定まる。つまり、「自分は、たくさんの大切な命を頂くことによって生かさせていただいているのだ!」という認識が大事なことであり、そのための殺生であるわけだから無駄なくありがたく感謝して大切に食することが大事なのだというわけだ。
駆除の対象は単なる殺戮の残酷でしかないわけで、人間の自己中心的な傲慢でしかないことであると解釈できる。

イスラエルの学者、ハラリ氏の著書『サピエンス全史』では「人類は発展の過程で、数え切れないほどの動植物を絶滅させてきた」とある。気になってKindleのお試しダウンロードで読み始めたら、あまりに重たい内容で今の自分にはそれを読み切るだけの心の余裕がないと、途中でやめてしまった。彼は1万年に及ぶ人類の歴史を研究して著書にまとめているわけだからスケールがデカイ。お釈迦様の「不殺生戎」という教えは今から約2600年前からのこと。地球滅亡のカギはホモサピエンスが握っているといっていいだろう。

今は太陽光発電のプレートが広がる元採土場跡を過ぎて、銀くんの窓を開けて爽やかな風を受けながら銀山街道を走っていると、牧草地を抜けたなんでもないところで、フッと針葉樹の香りが銀くんを包み込んだ。その先のトンネルに入るとその香りが一気に強まった。それからトンネルへ入るたびに針葉樹の残り香が車内へ入り込んで、マイナスイオンに包み込まれた感じだ。飯南高原の赤名城跡が見えてそこから出雲街道へ合流するところで、伐採の枝木を山積みしたトラックが広島方面へ右折するのが見えた。香りの元はアレだった。

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