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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

大往生 

2018/08/21
Tue. 23:29

珍しくワイフの方から電話が入った。
朝もまだ早いときで、目は覚めていたがダラダラとしていた。

本堂の荘厳はまだ片付かないでいる。
庫裏のゴザ座布団もひとまず用済みだから日干しをして片付けることになる。
夏の大衣も洗濯できるものはひと夏に染み込んだ汗を流してウコンに包んで片付けはじめた。
そんなことをしながら、三度の食事をつくって食べて使った食器などを洗ってシンクを掃除して・・・などと、施食会が終わってから連日似たような暮らしをしながら、供養法要へ出かけたりしている。
そういうボクの住職スケジュールをだいたい心得ているはずのワイフが珍しく早朝に電話をしてきたということは、あまり良い知らせではないだろうと直感したが、やはりそれが当たっていた。
石見銀山で20年ほど生活衣料雑貨会社の営繕担当に従事していた職人の親父さんが死んだそうだ。

享年78歳の親父さんは、大工左官仕事から、指物修理、庭つくりまで何でも一人でこなす便利職人の鏡のようなひとだった。
私も、彫刻のことや個展の展覧会のことなどでずいぶんお世話になったし、時には一緒に仕事をしたこともある。
センスが良いというより、素材をよく知っていることと、感の良さでダレがドコにナニを求めているかを絶妙のサジ加減でくみとってかたちに置き換える技は、他に真似のできる者がいなかった。
基本的に一匹狼の自分の腕だけを頼りに自己完結型の職人さんだったから、だいたいのことは一人で飲み込んで手際よく段取りを組み立ててコツコツと仕事に仕立てていた。
私も、彼と似たようなところがあって、なんでもだいたい一人でコトを済ます方だから彼の才能をもったいないと思っていて、一緒に仕事をしている時「いつまでも若いわけじゃないから、そろそろ下を育てることも考えて良いんじゃない?」と、でしゃばったことを云ったことがある。
なんとなくわかったふうな顔つきで頷いてはいたが、たぶん、そのつもりはないだろうとわかる気もして、それ以来、そういうふうな話題を封印した。

生粋の職人さんだったと改めて思う。
数多くの彼のコピーをそれらしく再現することは出来るだろうが、彼のようにゼロから工夫して造り出すことはなかなか出来るものでもない。
今年に入って一気に病気が進行して改善が望めないまま最後は病院での治療を切り上げて自宅療養に切り替えたそうだ。今の時代、我が家の畳の上で死ねるなどなかなかありそうで無いことだ。
私個人の気持ちはいろいろ複雑ではあるが、彼は幸せな人生を全うし、それなりに最後まで頑固に元気でかっこよく逝った大往生だったと、坊主的にはそう思う。

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