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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

カムバックグッチャン 

2018/10/18
Thu. 23:31

グッチャンが石見銀山に点在する鉄の野外彫刻を観て、フラリと吉田家へ立ち寄ったのは、まだ彼女が20代の頃だったと思う。
初対面のその時に、お茶飲み話で彫刻のことを話したのがきっかけで、それからしばらくして勤めていた仕事をやめて吉田家へ転がり込むように単身石見銀山へやってきた。
その頃の吉田家はまだ子供も小さかったし、犬のシェパ君も居て私も定職があって昼の間はワイフが一人で吉田家を切り盛りしつつそろそろ時間講師でもしてみようかと思い始めていた時期だったから「君の仕事は犬の散歩ネ!」と、それを条件にほとんど未使用だった変形の8畳を彼女の部屋に提供した。
子どもたちも彼女によくなついて、子守代わりもしてくれて、それなりに吉田家としては重宝した。
それでも彼女は何もしないで彫刻の制作三昧で毎日過ごすわけにもいかないから、近所のアパレル会社でアルバイトをすることに決めて、それからあとは1日や1周間や1ヶ月のスケジュールもしっかりと固まってくるし、生活のリズムもつかめてきて、時々私の彫刻の手伝いをしながら塑像の制作にとりかかった。
首像からはじめて石膏取りをして、そういうことを繰り返しながら続けていたアルバイトも本格的になって、会社の重要なポジションに定着して、それがきっかけになって吉田家から独立して会社所有の一軒家に住まわせてもらうことになった。
それから、塑像制作が本格的に回転するようになって、「制作工房があると良いね」ということになって、探し当てたのが棟梁の工場事務所。
ひとの良い、面倒見の良い棟梁の御陰もあって、夜な夜な棟梁の工場の事務所へ通いながら制作を続けて、等身大の彫刻を石膏取りをするまでになった。
住まいも、自分で探して会社の社宅から独立したが、「彫刻を造ることを優先したいから・・」と、アルバイト待遇の方はそのままで仕事を続けた。

グッチャンは、どちらかというと、彫刻のセンスがあって器用にオシャレにサラリと制作できるタイプではない。
一つ事を自分が納得するまでコツコツと積み重ねて、対象に誠実に向き合い、存在をトツトツと追求することに時間を惜しまないタイプの彫刻家になりつつあった。初期の頃は、粘土に伝わる指の跡も一つ一つが点で止まって、そういうことが連続して積み重なっていくふうな作風で、それは一方で流れるようなムーブマンの勢いを阻害してしまうし、造形の重心を低い方へ押し下げてしまうような重たい彫刻になることが多かった。
自分が納得しながら一つずつ制作を積み重ねることによって、ゆっくりではあるが確実に造形力が伸びる方向へ向かっていた時に結婚して石見銀山から東京のマンションへ転居した。しばらくは生活を優先の日常が続いていたが、数年の間に小さなテラコッタの彫刻を造れるまでに立ち直った。それから、毎年島根の現代彫刻小品展を目標に制作を続けてくれて、その後関東のグループ展へ出品する機会も得てだいたい10年が過ぎた今年になって、久しぶりに六本木の展覧会へテラコッタの胸像を出品した。
素材に忠実で仕事の痕が最小限まで抑えられて、表情の内面へ引き込まれるような清楚で慎ましやかで上品な胸像に仕上がっていた。審査委員の心が揺れたのかも知れない・・奨励賞を受賞した。造形力の蓄積が裏付けられた見事なカムバックだった。

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