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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

順番が狂った 

2019/02/11
Mon. 23:08

「ねぇ〜、今日は帰ってくるの?」
通勤坊主で出かけようとしていたら、珍しくワイフが聞いてきた。
「何もなければ、明るいうちに帰れると思うけど・・・」
「ねぇ〜、今日は帰ってきてよ・・」
寺の用事は予定がたてにくくて、急に電話がかかったり呼び出されたりすることがあるから、そういう時は状況に応じてそのまま寺泊になることもある。普通は「どぉ〜ぞ、わざわざ帰らなくていいわよ!また予定が変わったら連絡してね」程度のクールな肯定的反応が返ってくるばかりだが、今朝はいつもと様子が違う。
特に何かの記念日でもないと思うし、なっちゃんの誕生日もまだだし、何かの予定も無かったはずだし、どうもシックリと当てはまる素材が見当たらない。
「えっ?今夜何かあったっけ??」
「べつになにもないけど、できたら帰ってきてよ・・」
「わかった、とにかく、確実に帰ることにするから・・・それで、何で??」
「のどぐろ、そろそろ食べないと限界だから・・」
・・・なぁぁ〜〜んだ・・・
のどぐろには失礼だが、のどぐろの「賞味期限が迫っているから・・」という理由があったようだ。確かに、このところ連日何かしら何処かから貰い物が続いていて、昨日も急きょカキフライにありつくことになったし、ワイフの手料理の予定がどんどん狂ってそのたびにのどぐろが後に後に回されていたのだろう。私がいなくても一人で平らげれば済むことなのに、ワイフはわざわざ「ボクを待っていてくれたんだなぁ〜〜・・」と思わずニヤケた。
彼女と知り合って40年が過ぎた今でも、基本的に二人それなりに仲良く暮らすことができている。その日暮らしの貧乏一家だが、まぁ、それなりに幸せなことだ。
もう、若い頃のように好きだ嫌いだなどと何かにつけて男女の仲で心ときめくようなこともなくなったかわりに、どこかしら吉田家オリジナルの生活共同体的連帯感のようなものが出来上がって、お互いが適度な距離を保ちながらそれぞれの個人を尊重しつつ過不足なく支えあっているふうな具合だ。

「もしもし、万善寺さんですかいねぇ〜、息子が死んだんですがぁ〜・・・まだ家へ帰るのは先のようでハッキリしとりませんで、それで一応お知らせだけでもしておこう思いまして・・・」
「えっ??息子さんですか??」
それは、突然の電話だった・・・
お檀家さんのお父さんからで、電話の声は落ち着いているように聞こえたが、やはりどこかしら平常でない様子がうかがえる。何度か確認を取り付けたことを総合すると、どうやら死因がはっきりしなくて、その検死がされるらしい。坊主がジタバタしても始まらない。親子の順番が狂ったが、コレばかりはどうしようもないことだ。

夕食はのどぐろが煮付けになっていた。刺激的な1日になったが、のどぐろの美味さは十二分に堪能できた。
結局坊主は葬式請負人の役を全うするしかないことなのだろう。それで喪主家の気持ちが少しでも安らぐなら、それはソレで何かしらの意味があるのだろう。

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