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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

毎日が大型連休 

2019/04/28
Sun. 23:21

なっちゃんの出産後しばらくのあいだ身の回りの世話をすることになったワイフが、ボクの見舞いも兼ねて大量のコーヒーや文庫本などを差し入れしてくれた。これだけあれば、大型連休は何不自由なく過ごせそうだ・・・といっても、入院中の身にとっては毎日が大型連休のようなもので、どちらかといえばむしろ「暇つぶしに苦労することになるかもしれない・・」と、そちらの心配をしていたのだが、生活共同体の慈愛に満ちた以心伝心は実にタイムリーに効力を発揮することになった。

今は「ねじまき鳥クロニクル」を数年ぶりで読み返している。
文庫本になっても3冊に分かれるほどの超大作で、最初に読んだときはそろそろ今から10年以上は前だったと記憶している。ちょうど、月々の給料がもらえてボーナスまで保証された安定職を早期退職したばかりの頃だった。
先代住職の憲正さんへ少しずつ前後の記憶に空白が出始めるようになって、定期通院がおぼつかなくなったり薬の飲み忘れが頻繁になったりなどして、家族の支援が必要になりはじめていた。それでもまだ、本格的に介護が必要だというほどでもなくて、まぁ、昔の感覚でいうと「憲正さんも、そろそろいい歳になってだんだんとボケが出始めたらしいでぇ〜〜」くらいのことだったが、母親も身体が思うように動かないし、結局はさしあたって家族の誰かの助けが必要なわけで、今まで自由勝手にやりたい放題を続けてきたことでもあるし、そろそろ両親のことで少しくらいは親身に付き合う時期になってきたのだろうと、自分の甘えた気持ちに一区切りつけてしまおうと決めた次第だ。仕事の方もだんだんと込み入って面倒なことが増え始めてはいたが、自分がやめて組織の歯車が一つくらい無くなってもソレですぐに体制に影響が出るわけでもない。職にしがみついて自分の暮らしが楽であっても、高齢の両親が暮らしにくくなってしまってはどうしょうもない。

島根のブラック公務員から開放されてすぐの頃に、憲正さんのお供をしながら時間つぶしにBook Offで仕入れたのがねじまき鳥クロニクルで、運良く3部作が特価で揃っていた。
完全なる健康体というわけでもないが、特にコレと云った病気があるわけでもないボクにとって、総合病院の付添の待ち時間はとにかく長くて苦痛だ。バロックの室内楽を中心にアレコレとかき集めてiPodにためたものをヘッドホンから垂れ流しながら文庫本の文字を追いかけていると、そのうちお尻から太ももの裏筋にかけてシビレが広がっていく。自分でそんな感じだから、体調の思わしくない憲正さんはよくじっと我慢して硬い待合室の椅子に座っていられるものだと、彼の修行の深さをすぐ隣で実感して感心したものだ。

それで、ねじまき鳥クロニクル三部作だが、とにかく、圧倒的に文字数の多い本だった。それに、解釈の難しい展開で、同じ場所を数回繰り返して読み直すことも多々あった。それでも、ちょうど公務員を辞めて、特に毎日を改まった目的もなく曖昧に過ごしていた時期だったし、小説の中に出てくる新宿や小田急線周辺の街の様子が学生時代の自分の生活圏とダブって引き込まれるものがあった。
あの頃は気づかなかったことだが、久しぶりに読み返してみると、村上さんのくどいほどの長文に託した社会や時代へ対して何かしらの抵抗が発信されているようで、今、その旨味のようなものをぼんやりと噛み締めている。

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