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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

口乃心之門 

2019/05/14
Tue. 17:11

三食昼寝付きに土日祭日無くリハビリ療法士さんが身体のアチコチをほぐしてくれる。
ボクの生涯でこんな贅沢な毎日を過ごすことなど二度と巡ってこないだろうと、しみじみそんなことを思いつつ、まだ陽の高いうちから風呂につかっている。

しばらく続いていたシャワー生活から「明日から首の装具をはずしてお風呂に入られていいですよ!くれぐれも足元とを気をつけてくださいね♡!」と、看護師さんから入浴許可を頂いたのはだいたい1週間ほど前のこと。ベッドにゴロンと横になってこわばった身体の関節や筋肉をほぐしながら文庫本を読むのが暇つぶしのようなものだから、もう、かれこれ10冊近くの小説や実用書などを読み終わった。周囲のざわめきが気になるときは、ウエブラジオをヘッドフォンから小さく垂れ流しておくと、もう、完全に自分の世界へ入り込んでしまう。

この数週間の入院で気づいたことがある。患者さんの独り言が絶えないということ。
バイクの交通事故で入院中の青年まで、とにかく世代を超えてまんべんなく独り言が出る。
そういえば、万善寺暮らしの憲正さんや俊江さんも独り言が多かった。だいたい老人はそういうものなのだろうと、その頃は特に気にすることもなかったが、こうして一つ病室で集団生活をしていると自分以外のみんながそれぞれ何かしらブツブツとつぶやいていて、ソレがアチコチから聞こえてくる。一度気になると、自分の耳が敏感に反応して聞くともなしに聞いてしまうようなことになって厄介なことだ。
少し意識して自分の1日を緊張しながらチェックしていると、何故か自分には独り言が出ていない。そんなものなのだろうか?自分で気づかないだけなのかも知れない・・・
「口乃心之門(くちすなわちこころのもんなり)」と、菜根譚にある。
まぁ、口は慎みなさいよ・・とでもいうことなのだろうが、改めて自覚すると自分の思っていることを知らない間に口走っているようなことも、けっこうあったりする。
場合によっては、些細な一言で相手を大きく傷つけてしまったり、取り返しのつかない誤解を生じたりなどなど、良いことは一つもない。

結局うまくスケジュールが合わなくて映画を見逃してしまった「散り椿」を読んだ。
葉室麟さんは藤沢周平さんが亡くなってからアレコレと系列の糸を手繰ってたどり着いた。「蜩ノ記」も良かったし「冬姫」も面白かったし・・・と、今までソコソコ読んできたが、この入院中に読んだ「蛍草」は、思わず嗚咽の声が漏れるほど泣いた。葉室麟さんはどちらかというと説教めいた堅苦しくて無骨な感じの時代小説が多いと思っているが、この蛍草は彼の作風には珍しく周五郎さんとか周平さんに近い娯楽色の強い読み物になっていて、楽しめた。
自分の身勝手な想像だが、葉室麟さんは中国の儒教道教や仏教キリスト教などの宗教をかなり読み込んでいらっしゃった気がする。儒教の建前と道教の本音を適度にミックスしながらブレのない禅の死生観が主軸に構成されている。
今から400年ほどは前だろうか?戦国から江戸にかけての日本は、東洋哲学や宗教が今よりもっと身近な学問のバイブルとして日々の暮らしに活用されていたのかもしれない。

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