FC2ブログ

工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

風動幡動 

2019/12/01
Sun. 23:56

関東の方は2年続けて木枯らし一号の吹かないまま11月が終わったらしい。
だいたい標高450mあたりに位置する山寺の万善寺は、12月を待たないで11月も終わろうとしているある日の朝、初雪というほどでもないくらいの雪の粉が舞い落ちた。

飯南高原は毎年決まったように11月の最終週の頃に初雪が降る。
今年は晩秋になっても暖かい日が続いていたからもう降らないだろうと気楽に考えていたから、スタッドレスタイヤに履き替えてもいなくてチキン坊主のボクは少々焦った。同級生のモーターズへ電話したら「15分もあれば交換できるからいつでも良いよ!」といってくれたので「それじゃぁ、法事の間に交換しておいてくれる?」ということになった。保育園の頃からの付き合いだから半世紀以上の腐れ縁になるが、こういう、地元の同級生がそれぞれ異業種で散らばってくれていると、人付き合いが苦手なボクとしてはとても助かる。

12月1日は、朝から33回忌の年回法事が決まっていた。
丁度故人の祥月命日で日曜日だから親族も集まりやすかったのだろう、もう3ヶ月くらい前に法事の予約が入っていた。
いつも塔婆書きに使っている硯は、吉田家の子供達が義務教育時代に中学卒業まで使いまわしていたものだ。プラスチックの硯箱にセットで入っていた教材用の墨はもうとっくに使い切って、今は3本目がそろそろ無くなろうとしている。
墨汁では雨に流れて使い物にならないから、こうして塔婆に書く墨は、毎回せっせと硯で墨を摺る。今どきの日常に硯で墨を摺るようなことはその筋の書道家を別にして寺社関係の職業宗教家くらいしかいないだろうと思う。
在家坊主の住職は長方形に練り固めた墨の棒を先端が鋭角に尖るまで斜めに斜めに傾けて摺り続ける。摺り落とす面が少しでも広いほうが塔婆書きの時間短縮につながるからだ。
私は、どうもそのスタイルが気に入らなくて、律儀に墨を硯へ直角に立ててきちんと3本の指で摘んでゆっくりと前後に動かすように摺り続ける。今は、墨が短くなって指で持てなくなってペンチを使って摘んでいる。今どきケチくさい話だが、なんとなく塔婆書きへ入るまでの準備運動というか手慣らしというか、そういう一つのものに集中できるまでの時間が大事だとも思う。
それで、そうやって墨をすりながら塔婆の裏書きを考えて、「風動幡動(ふうどうばんどう)」と書いた。有名な禅語だから興味があればググってみれば出てくるだろう。
グレッグ・ローリーの18年ぶりになるニューアルバムを聴きながら塔婆を書かいた。
彼は、あのジャーニーでスティーブ・ペリーの前にキーボードとボーカルを担当していた人だ。少し前にスティーブ・ペリーも久しぶりにソロアルバムを出しているから、それに影響されたわけでもないだろうが、とにかく元気に現役でいられて良かった。

吉田にとっての1970年前後は自分の人生の大きな転換期であった。周辺の環境が一気に変わって、わけもわからないまま時代の激流に流されてアッという間に飲み込まれていった。そんな状況で自分を見失わないでいられたのは、リアル・タイムでアメリカのウッドストックやフォーク・ロックや一連のニューシネマがあったからのような気がする。

IMG_0511.jpeg
IMG_0512.jpeg

[edit]

CM: 0
TB: 0

page top

この記事に対するコメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://tetujin29.blog31.fc2.com/tb.php/3295-2650cf64
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

2020-04