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工房むうあと鉄の手仕事

鉄の彫刻家、吉田正純の手仕事、彫刻や展覧会の紹介、万善寺住職活動など、さまざまな日常を公開します。

初月忌 

2019/12/06
Fri. 23:24

雪は境内に少しほど残してあとはすっかり消えた。
ひとまずシーズン最初の寒波が去ったようだ。
万善寺の庫裏はアチコチ隙間だらけで、立て付けの悪いガラス戸1枚で仕切られただけの外の気温と殆ど変わらなくて寒い。
潜り込んでいた布団のぬくもりが恋しくてなかなか起き上がれないままグズグズしていたら知らない間に二度寝をしてしまって、9時過ぎには初月忌のお経を読みに出かけようと思っていたのに寝過ごして遅刻してしまいそうになった。
寒いなどと言っていられないから、急いでハンガーに掛けてある冷え切った襦袢や袷の着物を着た。

早いもので、おばあさんの訃報を聞いて枕経を読んでからもう1ヶ月が過ぎた。
初月忌は、祥月命日の次の月に巡ってくる、初めての月命日を云う。地域や寺の事情によっては初月忌のお経を割愛するお寺もあるようだが、万善寺の場合は施主家の要望があれば伺うようにしている。それでも、前住職から私に代替わりした頃にはすでにその習わしもほとんど消えかけていて「初月忌はどうされますか?」と聞くと「ソレなんですか??」と聞き返されたりすることが殆どになっていた。意味の説明をしていると、話の途中で「ソレいいですわぁ〜、どうせすぐに七日が回ってきますから・・」と辞退される。四十九日までの七日ごとのお参りと、初月忌のお参りはその趣旨とか意味がぜんぜん違っているのだが、日常の我が身の生活に手一杯で「そういう仏事の一つ一つへ律儀に付き合うだけの余裕が無いので・・・」という面倒臭そうな様子がモロに表情へ出ていたりすると、その程度の信心へいちいち付き合うことも面倒になって「あぁ〜そぉ〜ですか。じゃぁ〜オタクでお供えしてもらって、舎利礼文くらいは読んであげておいてください・・・」と、サラリと流してしまう。
万善寺くらいの規模の寺で、葬式坊主とか法事坊主を決め込んでセッセと坊主営業を勤め上げても、ソレだけで我が身の日常生活が普通にできるわけでもないから、せめて寺に居る時くらいはできるだけ本来坊主の大事な勤めである修行三昧とガタピシ山寺の維持管理の作務に励むことを大切にしようと心がけている。

それで、滑り込みセーフで初月忌のお経を読むことが出来たあと、世間話をしながら帰り支度をしていたら「ちょっとまってくださいね、お膳のスパゲティーたくさん作りすぎたんで方丈さんのお昼代わりにしてもらおうと思って・・・今持ってきますから・・・」と、あらかじめ準備してあった様子のラップで包んだお弁当を頂いた。丁寧に割り箸まで添えてあって、ラップ越しにサラダや香の物も見える。
「おばあさん、食べることが本当に好きだったから・・・味付けが薄いと思いますから・・・濃い味のものがあんまり好きじゃなかったものですから・・・」
むすめさんはこうして節目のお膳を料理しながら生前のおばあさんの好みをなぞっていらっしゃるのかも知れない。まさに、おばあさんのお膳のおさがりを頂いたふうで、むすめさんの信心の気持ちが手にとるように伝わってくる。
四十九日まで続く仏事で、これほど坊主の気持ちが和むことはめったに無い。
お昼は、自然と背筋が伸びて手作りのお弁当に手を合わせて合掌した。

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